裁判長の左遷、最高裁事務総局経験者の「送り込み」がもたらす萎縮効果
2016年06月27日
(1)(2)を踏まえて、原発訴訟の状況について素描をしておきたい。
原発訴訟については、2011年の福島原発事故後、2つの方向の裁判がある。やや複雑になるが、現在の状況を明らかにするために、主要な裁判をまとめてみたい。
一つのグループは、①福井地裁の大飯原発差止判決(2014年5月21日)、②同地裁の高浜原発差止仮処分(2015年4月14日。①、②とも樋口英明裁判長)、そして、③2016年3月9日の大津地裁による再度の高浜原発差止仮処分(山本善彦裁判長)である。樋口裁判長の②仮処分は、①判決の考え方を整理してより明確化し、基準地震動の策定方法に関する問題点や地震に対する電源確保方法の脆弱性をついている。
後者のグループに属する裁判の考え方を要約するのが⑥の取消決定で、「裁判所は原発の新規制基準への適合性さえ審査すれば足りる」とし、同時に、「しかし万一の過酷事故の可能性は否定できないから避難計画等はより実効性のあるものとしなさい」ともいっている。判断枠組みのみならず、決定全体の書きぶりや方向性が、前記の2回目の研究会で示された論調とほぼ同じ(確かに、最高裁判決の枠組みの中で、より「ていねい」(?)に書かれている)であり、また、福島原発事故以前の棄却判決群にもきわめて近いことに留意すべきであろう。
私は、すでに論じたような観点から、④以下の裁判のあり方には、大きな疑問を感じる。裁判所当局が樋口裁判長を地裁の裁判現場から排除した感のある2015年4月の樋口裁判官の名古屋家裁への異動後、入れ替わりに赴任してきた3名の裁判官が⑥の取消決定を出している(うち裁判長を含む2名は⑤にも関与)が、これらの裁判官はいずれ最高裁事務総局勤務経験があることにも留意すべきであろう。
原発訴訟については、以前から、こうした「送り込み人事」の可能性が
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