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フィギュアスケートの振付、勝敗を分けるものは?

五輪に向けて、プログラムを冒険するチャンス

田村明子 ノンフィクションライター、翻訳家

ジャッジは振付のどこを見ているのか

 現在のISU(国際スケート連盟)採点方式は、ジャンプ、スピンなど技術を評価する「要素点」と、スケーティングの質や表現などを評価する「5コンポーネンツ」の2部に分かれている。

 その5コンポーネンツの一つに、Choreography/Composition(振付、構成)という部門がある。

 ISUルールブックに、このChoreography/Compositionはどのような基準で評価するのか、という説明がある。

 原文は英語だが、できるだけわかりやすく、ざっと概要だけ要訳してみよう。挙げられているのは、主に以下のようなものだ。

目的意識(アイディア、概念、ビジョン、ムードなど):プログラム全体に、意図的な流れとデザインがあるかどうか。

全体のバランス:プログラムを通してどの部分も同じくらい重要であり、全体的に偏りがないかどうか。

統合性:全ての動きに意図的なつながりがあるか。全てのステップ、エレメンツが音楽に合っているか。

空間の使い方:360度どこから見ても、表現したいものが伝わるように構成されているかどうか。
パターンと氷の使い方:動きのフレージング(区切り方)が興味深く、描くパターン、進行方向などに意味と多様性が備わっているかどうか。

フレージングとフォーム:動きのそれぞれの部分が、音楽のフレージングとよく合っているかどうか。

テーマ、動き、デザインなどの独創性:音楽とその根底にあるイメージなどを元に制作された構成を、個々がどれほど自分のものとして独創的に解釈できているか。

 いかがだろうか。振付を評価するのに、ジャッジはこれだけのことを頭に入れて採点をしなくてはならないことになっているのだ。

プログラム振付の代償は

 プログラムの振付は、Choreographyのスコアだけではなく、Transition(つなぎ)のスコア、また構成によって「要素点」をどれほど取れるかなど、採点に大きな影響を及ぼす。

フィギュア男子で銀メダルに終わったプルシェンコ(ロシア)。右は金メダルのライサチェク(米国拡大バンクーバー五輪で銀メダルのプルシェンコ(ロシア)と金メダルのライサチェック(アメリカ)。違う振付師のプログラムであれば勝敗が違っていたかもしれない
 それだけに、どの振付師にプログラムを依頼するかというのは、スケーターにとってシーズンの明暗を分ける重大な決断だ。

 多数のチャンピオンの作品を振り付けたトップ振付師 ・・・ログインして読む
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筆者

田村明子

田村明子(たむら・あきこ) ノンフィクションライター、翻訳家

盛岡市生まれ。中学卒業後、単身でアメリカ留学。ニューヨークの美大を卒業後、出版社勤務などを経て、ニューヨークを拠点に執筆活動を始める。1993年からフィギュアスケートを取材し、98年の長野冬季五輪では運営委員を務める。著書『挑戦者たち――男子フィギュアスケート平昌五輪を超えて』(新潮社)で、2018年度ミズノスポーツライター賞優秀賞を受賞。ほかに『パーフェクトプログラム――日本フィギュアスケート史上最大の挑戦』、『銀盤の軌跡――フィギュアスケート日本 ソチ五輪への道』(ともに新潮社)などスケート関係のほか、『聞き上手の英会話――英語がニガテでもうまくいく!』(KADOKAWA)、『ニューヨーカーに学ぶ軽く見られない英語』(朝日新書)など英会話の著書、訳書多数。

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