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オリンピック選手を送り出すにも控えめに

夏季五輪初の女性主将・吉田沙保里を送った壮行会は前代未聞の豪華さ

増島みどり スポーツライター

 大宴会場の入口で、まるで政治家が資金集めに行ってきたパーティーではないか、と一瞬考えたが、いや、そのレベルなど遥かに超えている、とすぐに思い直した。

 ヒロインによく似合う鮮やかな生花で作られたスタンドフラワーが、宴会場入口前から両側に数十㍍びっしりと並べられ、送り札には人気芸能人、プロスポーツ選手、有名プロダクション、日本の財界を代表する人物たちの名前が記されている。今どきの政治家だって、これほどの集客力を誇る会を行うのは難しいはずだ。

 会費2万円を払う参加者の受付には長蛇の列ができ、会費のほかにご祝儀袋を差し出す出席者も多数、スケジュールの合間を縫って大人気のタレントたちが「一言お祝いを」と、続々と会場に駆け込

吉田沙保里(右)の壮行会で音頭をとるアントニオ猪木氏=2016年7月2日、東京ドームホテル拡大吉田沙保里(右)の壮行会で音頭をとるアントニオ猪木氏=2016年7月2日、東京ドームホテル
んで来ては固い握手を交わす。

  過去にも、そして今回のリオデジャネイロ五輪においても、数多くの代表選手壮行会を見てきた。しかし、7月2日、都内・東京ドームホテルで開催された女子レスリング、吉田沙保里(33)の壮行会ほど豪華で、派手な壮行会を取材した経験はない。

  前人未到の4連覇を(今回は階級変更で53キロ級)をかけ、夏季五輪では史上初となる女性主将に指名され、名実とも日本選手団の顔となる女性アスリートをリオに送るために土曜日の夕方、1096人(実行委員会発表)が集結。発起人名簿には親友・澤穂希さんら過去の五輪メダリスト、王貞治氏らスポーツ界、乾杯の音頭を取ったアントニオ猪木氏に朝青龍と格闘技界の人脈、石田純一氏に木梨憲武氏、野田聖子衆議院議員、吉田の母校、志学大・谷岡郁子学長ら約50人が並ぶ。入口からバルセロナ五輪金メダリストの吉田秀彦氏、高田延彦RIZIN統括本部長に肩車されて主役が登場し会場の「お祭り」ムードは早くもピークに達した。

   しかし、これは一体何のパーティーなのか。肝心の「うたい文句」は広い会場のどこにもない。2016年リオ五輪全ての壮行会を象徴するシーンでもある。特別ないわば御達しが出ているからだ。

JOC(日本オリンピック委員会)から出された御達しとは

  女子レスリングで4連覇を狙う宴会にも関わらず、外にも「オリンピック」「リオ」「壮行会」或いは4連覇を狙う上で欠かせない「金メダル」といった文字がどこにも見当たらない。1000人の前に掲げられていた大看板には「めざせ、前人未到の四連覇」とだけある。これでは、スポーツを深く知らなければよく分からないだろう。

  JOCは、IOC(国際オリンピック委員会)が定めるルールを、より厳格に守るよう、5月に各競技団体向けに詳しい説明を行った。ロンドン前にもこうしたルールは存在していたが

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筆者

増島みどり

増島みどり(ますじま・みどり) スポーツライター

1961年生まれ。学習院大卒。84年、日刊スポーツ新聞に入社、アマチュアスポーツ、プロ野球・巨人、サッカーなどを担当し、97年からフリー。88年のソウルを皮切りに夏季、冬季の五輪やサッカーW杯、各競技の世界選手権を現地で取材。98年W杯フランス大会に出場した代表選手のインタビューをまとめた『6月の軌跡』(ミズノスポーツライター賞)、中田英寿のドキュメント『In his Times』、近著の『ゆだねて束ねる――ザッケローニの仕事』など著書多数。

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