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”AV出演強要”報道に対する反発の理由(下)

根本にあるのは職業への偏見

杉浦由美子 ノンフィクションライター

  AV出演強要問題がクローズアップされることで、業界はさらにコンプライアンス意識を高めていくだろう。これは今回、AV出演強要問題が注目されたことでのプラスの面だ。しかし、マイナスの面があることにも言及していきたい。なぜ、当事者のAV女優たちは、認定NPO法人ヒューマンライツ・ナウの報告書に対して反発するのか。理由はAV業界への偏見を助長しかねないからだ。

AV女優は不幸であることを求められる

  ある男性ライターが、AV女優にインタビューして書いた本が物議を醸した。
彼は取材で、AV女優たちの「不幸な生い立ち」や「切ない実情」を引き出そうとした。しかし、実際、AV女優たちは、普通に育って、やりがいを感じながら、アダルトの仕事をこなしていたので、望むようなコメントを言わない。

  そこで、そのライターは、彼女たちの言葉尻を捉え、無理矢理、薄幸な女性たちとして、AV女優を描いた。

  インタビューされたAV女優たちは強く反発をした。実際と違う人物像を、イメージ操作で作られてしまったのだから。このトラブルを聞いて、私は一記者として、難しいなあと感じた。読者のニーズは、AVに出ている不幸な女性像なのだ。出版はビジネスなので、読者が読みたい内容を作る必要がある。このライターは読者の求めに応じたわけで、書き手としては優秀だといえよう。実際、その本はヒットした。しかし、AV女優たちの反発も当然のものだ。

”自分よりも下の存在”探しの報道

  さて、なぜ、読者は「AV女優は不幸」であることを求めるのか。それは人々がメディアに求める女性像は「自分より下の存在」だからだ。昨今の貧困に関する報道にも、この「自分より下の存在探し」の視点が見受けられる。

  たとえば、シングルマザーの実態を取り上げる記事では、 ・・・続きを読む
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筆者

杉浦由美子

杉浦由美子(すぎうら・ゆみこ) ノンフィクションライター

1970年生まれ。日本大学農獣医学部(現・生物資源科学部)卒業後、会社員や派遣社員などを経て、メタローグ社主催の「書評道場」に投稿していた文章が編集者の目にとまり、2005年から執筆活動を開始。『AERA』『婦人公論』『VOICE』『文藝春秋』などの総合誌でルポルタージュ記事を書き、『腐女子化する世界』『女子校力』『ママの世界はいつも戦争』など単著は現在12冊。

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