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マイナンバー制度のこれまでとこれから

プライバシー保護とどう向き合っていくべきか

宮下紘 中央大学総合政策学部准教授

 マイナンバー制度が2016年1月から本格的に運用され始め、さまざまなトラブルがきこえてくるが、一体この制度は今後どのように運用されていくか。制度の当初の目的に立ち返って、プライバシー保護の観点から冷静に考えてみたい。

マイナンバー制度のこれまで
トラブルはつきもの

マイナンバーにつく写真拡大水害訓練でマイナンバーカードを使って申し込みをする避難者役の市職員=6月26日、新潟県三条市
 マイナンバー制度が2016年1月に本格的に運用してから、さまざまなトラブルが報道されてきた。自治体の窓口では、通知カードの誤交付が多く見受けられた。また、システム不具合などが理由となり、多くの自治体で個人番号カードの交付に遅れが出た。1061万枚の申請に対し交付は約560万枚であると報道された(2016年6月時点)。さらに、マイナンバーの個人用サイトである「マイナポータル」は2017年1月の運用開始予定を半年延期することにもなった。

 1億人以上もの国民に一つのミスもなく、無事に通知カードを配布し、個人番号カードの発行を完璧にこなすことは不可能に近い。今後は、情報システムの在り方や計画を見直しなどするとともに、国は各自治体における窓口におけるトラブルの事例を集約するなどして、トラブルの削減に努めることが求められる。

不正な利用

 マイナンバーの不正利用等の監視役としての個人情報保護委員会は、2015年度中に誤交付が多く見受けられた自治体に対して83件の注意喚起を行ってきた。100人を超える漏えいを記録した重大な事態は2件であった。今後、重大事態などは個人情報保護委員会への報告が義務付けられた。

 また、中にはインターネット上において、占いやチェックデジットの確認ができるとして、マイナンバーの入力を求めるウェブサイトの運営事業者などに対する注意喚起等が4件見られた。マイナンバーに関する苦情あっせん相談は2015年度で993件にのぼる。

 マイナンバーに便乗した詐欺事件なども報道されており、不正な利用に対処するための個人情報保護委員会の役割が非常に重要になってくる。2015年度末の定員は52名であり、今後不正利用への監視に向けた組織の強化が望まれる。

マイナンバー制度のこれから

 皆さんの中には個人番号カードを手にされている方もいるであろう。プライバシー保護との関係で注視していかなければならないことは、さしあたり2点ある。

 ひとつは、マイナポータルである。マイナポータルは自らの年金記録や納税情報を確認するための手段として自宅のパソコンなどから利用できる専用ポータルであり、2017年7月以降の利用が計画されている。

 マイナンバー制度には、確かになりすましや個人情報の漏えいの危険がある。しかし、制度の設計段階において、番号だけでは本人である証明とならないことや情報の分散管理によりこの危険を最小限にとどめるようにしている。

 ところが、設計段階では、政府の側においていかに個人情報を安全に保管するかという議論に集中してきたあまり、国民の側における個人情報保護の在り方が検討されてこなかった。

マイナポータルを通じた漏えいの危険性

 年金記録や納税情報はマイナポータルを通じて各人が閲覧できるというが、各人がパソコンやスマートフォンを通じて閲覧できるよう計画されている。しかし、この情報が各人のパソコンやスマートフォンを通じて漏えいしたり、ハッキングされたりすれば、政府の側において万全な管理体制も意味をなさない。

 所得・納税額などの機微に触れる情報がマイナポータルから閲覧できるとすれば、これに対するセキュリティーには万全を期す必要がある。政府が多額の予算を組んで情報を分散管理し、

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筆者

宮下紘

宮下紘(みやした・ひろし) 中央大学総合政策学部准教授

一橋大学大学院法学研究科修了,博士(法学),ハーバード大学ロースクール客員研究員などを経て現職。著書に,『事例で学ぶプライバシー』(朝陽会・2016),『プライバシー権の復権』(中央大学出版部・2015),『ネット社会と忘れられる権利』(共著)(現代人文社・2015)など。マイナンバー制度については,「マイナンバー制度をきっかけに日本のプライバシーを考える――アメリカとヨーロッパとの比較」SYNODOS2015年12月22日,「大丈夫か,マイナンバー」日本記者クラブ2015年10月13日など。

※プロフィールは、論座に執筆した当時のものです