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リアリティショーを現実にしたトランプ氏(上)

CBSテレビ首脳は「アメリカにとってよくないかもしれないが、テレビにはいい」

久保田智子 アナウンサー

共和党大会で握手を交わすトランプ氏(左)とペンス氏=2016年7月20日、米オハイオ州クリーブランド、ランハム裕子撮影拡大共和党大会で握手を交わすトランプ氏(左)とペンス氏=2016年7月20日、米オハイオ州クリーブランド、ランハム裕子撮影
 その日もいつものように私は煎餅をかじりながらテレビ画面を見つめていました。トランプ氏の髪はどうなっているのかしら、発言がむちゃくちゃだな、などと、リアリティショーを見る感覚でウィスコンシン州でのタウンホール・ミーティング中継を楽しんでいたのです。ところが、司会者のある一言に煎餅を弄る私の手は止まります。

  「それ、5歳児の議論じゃないか!」

 アメリカの人気キャスター、アンダーソン・クーパーがトランプ氏に発した言葉に、私は米国メディアのトランプ氏の扱いが変わり始めたことを感じたのです。3月末、トランプ氏が共和党大統領候補に指名される現実味が増していた時期でした。ここまでトランプ氏の「5歳児の議論」を盛り上げてきたのこそメディアだったのに、そのメディアが「5歳児の議論」を正面から批判したことに、私はこれまで別次元にあったリアリティショー(現実らしいフィクションの世界)がリアル(現実の世界)に格上げされた瞬間を見た気がしたのです。

  アメリカのテレビ番組「アプレンティス」というリアリティショーで人気者になったトランプ氏は、立候補もリアリティショーの延長と揶揄され、報道というリアルな世界で、フェイクなジョークとして見下された存在でした。ここからリアリティショーの逆襲が始まるのかもしれない。私は興奮して口の中の煎餅を一気に飲み込んだのでした。そして確かに、この後本戦に向け、リアリティショーがリアルをあっさり追い越し、さらにリアルを征服していく姿を目の当たりにすることになるのです。

  大統領選の共和党候補者指名争いは17人が乱立する幕開けとなりました。日本なら放送法により報道の政治的公平が求められますが、アメリカでは放送に公平公正を求める「フェアネス・ドクトリン」は表現の自由を侵害するものだとして80年代に廃止されています。つまり、17人を平等に扱う義務はなく、政治報道のあり方は放送局に委ねられているのです。

  真面目に政策を語る他の候補者と違い、予測不可能で極端な言動を繰り返すトランプ氏はテレビ局の視聴率稼ぎに貢献します。「メキシコとの国境に壁を作る」や、

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筆者

久保田智子

久保田智子(くぼた・ともこ) アナウンサー

アナウンサー。2000年、TBSに入局。17年6月に退社。「どうぶつ奇想天外!」「王様のブランチ」「筑紫哲也のNEWS23」「報道特集」「Nスタ」などのキャスターを担当。著書に『日日猫猫』。12年には文芸誌『群像』にて短編小説『息切れ』を発表。趣味はマラソン。ホノルルマラソンに8年連続出場。最高タイムは東京マラソンにて3時間55分。米国ヨガアライアンス、イシュタヨガ認定インストラクター。

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