安定性はあるが爆発力に欠ける成績、昇進の経緯と横綱になってからの実績は無関係
2016年07月28日
横綱そして大関の昇進基準は相撲解説者から市井の論者までが様々な可能性について論じているが、現実には日本相撲協会の審判部が事実上決めている。審判部を拘束する横綱昇進基準の明文規定は「大関の2場所連続優勝またはそれに準ずる成績、かつ品格力量抜群」だということのみである。「品格力量抜群」か否かが昇進前にチェックポイントになったのは過去双羽黒(北尾)の一例に過ぎず、それも昇進という結論になっている。稀勢の里についてこの論点は問題にはならない。
現在の昇進基準と対比可能なこの60年弱(15日制・年6場所となった1958年以降。以下「過去」)の全事例を検証しても、「準ずる成績」の当落きわどいケースについて、論理的・一貫性とは到底呼び難い判断も散見され、結果として妥当・微妙・不当がないまぜで多数の昇進と見送り事例が積み上げられている。
稀勢の里は、3場所前:優勝者を含む2横綱に負けたのみの13勝2敗、2場所前:優勝者を含む2横綱に負けたのみの13勝2敗、直前場所:優勝者を含む1横綱と2平幕に負けての12勝3敗で、優勝同点(決定戦負け)はないが、3場所連続で千秋楽周辺まで優勝を争い、優勝者に次ぐ勝ち星の“準優勝”だった。勝ち星数で言えば直前2場所は25勝と過去の横綱昇進事例では最低レベルだが、3場所合計38勝は過去の平均的な横綱昇進事例と言える。逆に2場所26勝以上、3場所38勝以上で見送られた例も、妥当・不当含めて過去10例以上にのぼる。
稀勢の里が実質的に横綱を務める力量をこの3場所示したかについて言えば、横綱が現在3人いる中で、毎場所優勝を期待されるべき横綱の成績としては十分と言える。この1年6場所だけ見ても稀勢の里は68勝しており、平均(フル出場場所の勝ち数÷フル出場場所数)11.3勝は横綱日馬富士(11.4勝)に並び、横綱鶴竜(10.4勝)を明らかに上回る。この3人の成績はこの3年ほど常にこのような状態にあり、優勝(この1年で日馬富士2回鶴竜1回、3年間では日馬富士3回鶴竜2回)という結果が伴わない稀勢の里(0回)だけが大関の地位にあるが、昇進基準を満たさないだけの‘準横綱’、全力士中2~3番目に強い力士、と言って差し支えない存在にある。
横綱は‘安定性’でなれるわけではなく、前述の「2場所連続優勝またはそれに準ずる」という明文のとおり、連続2~3場所で出場力士中ナンバー1である
ことの‘爆発力’を示さないと、昇進基準を満たさないことになっている。
大関と同様に横綱とは、昇進後に昇進直前の成績を一度でも残せば
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