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最終予選タイ戦での新人2ゴールの意味と可能性

サッカーW杯ロシア大会に向けた初戦でつまずいた日本代表は波乱含み

増島みどり スポーツライター

 試合直前から振り続けた雨は時間を追うごとに激しさを増し、ピッチはみるみるぬかるみ、ホームのタイに味方する。後半に入っても日本代表のリードは1-0のまま、ビッグチャンスをことごとく決め切れず、追加点が奪えない。もどかしいシーンが続くなか、また、UAE戦のように勝ち点を失うのか・・・。後半30分になろうという時間帯、ラジャマンガラスタジアムにはそんな空気が漂い始めていた。

  9月1日に火ぶたを切ったW杯ロシア大会アジア最終予選で、日本は有利なホームからスタートダッシュを切るどころか、国内の予選では実に19年ぶりとなるショッキングな逆転負けを喫した(対UAE 1-2)。今シリーズ最初のアウェー、タイ戦にもし勝てなければ、ロシアが遠のくような正念場を早くも迎えていた。

タイ戦後半、2点目のゴールを決める浅野=2016年9月6日、タイ・バンコクタイ戦後半、2点目のゴールを決める浅野=2016年9月6日、タイ・バンコク
  1-0のまま動かなかった試合を決めたのは、この日、シリーズ初の先発でワントップに起用された21歳だった。後半30分、長谷部誠主将(32=フランクフルト)から前線を狙ったパスに、浅野拓磨(シュツットガルト)がすぐに反応し、一度頭でボールをコントロールし右足でゴールを奪いタイを突き放す。

  U-23代表として出場したリオデジャネイロオリンピックでは予選敗退(1勝1分け)し、最終予選では大島僚太(23=川崎)と2人、いわば「昇格」を果たした若きストライカーのA代表2点目が勝点3をもたらした。5日前は「幻の同点ゴール」で、最終予選の厳しさを噛みしめたばかりである。

  「やっとゴールを決められ少しホッとした。これまで、厳しい、厳しいと言われる最終予選は観る立場でしたが、こうやって出場してみて、それがどれほど厳しいのか実感した2試合だった。でもここにいられる幸せを噛みしめて、これからも努力を続けたい」

  この1点は、今後、1年続く最終予選の中心的メンバーへの名乗りをあげるゴールになるはずだ。前半、この日が最終予選初先発となったFW・原口元気(25=ヘルタ・ベルリン)も前半18分、右サイドからのクロスをヘディングで決めて先制点をものにした。

  原口の加入で左サイドからの攻撃が推進力を持った効果も見逃せない。初戦から代わって入った2人のゴールゲッターの2点には、実は大きな意味がある。

  2014年ブラジルW杯最終予選から初戦のUAE戦までの得点者は、DFと現在は代表に呼ばれていない選手を除けば本田圭佑(30=ACミラン)、岡崎慎司(30=レスター)、香川真司(27=ドルトムント)、清武弘嗣(25=セビリア)で占められてきた。試合を決めたのが、彼らのゴールではなかった点は今後に新しい可能性を示すポジティブな兆しとなった。

ハリルホジッチ監督は難題にどう向き合うか

  初戦では起用されなかった山口蛍(25=C大阪)も、守備で体を張ってボールを奪う存在感は十分に示し、初戦で大きく出遅れた代表はやっと走るための態勢を立て直したといえる。ボランチは、歴代、世界で日本代表が闘う上でのエンジン部分とされてきた重要なポジションでもある。そのさらに「心臓部」とまで敬称されたMF・遠藤保仁(36=G大阪)が代表に選出されなくなり、後継者は長く不在となっている。

  タイ戦後、長谷部は山口について「ボールを奪って攻撃につなげていく力は大きい」と、パートナーとしての信頼を口にし、今後の安定したパフォーマンスに期待を寄せた。ブラジルW杯に出場しており、今後は山口自身も経験していない最終予選の過酷な試合を切り開く、重役をも担わなくてはならない。

  しかし、タイ戦の勝ち点3はそれでも態勢を整えたに過ぎず、初戦で明らかになった1年を戦い抜くための試合運びにはまだ遠い状況だ。

  先ずゴール決定力。初戦22本、タイ戦も21本を打って3得点に終わった。W杯ロシア大会アジア予選のシンガポール戦がスコアレスドローで始まった際も、

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