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「シン・ゴジラ」が国民的映画になった理由(上)

庵野秀明総監督が采配した細部のリアルさと深層心理への働きかけ

田中敏恵 文筆家

 8月中旬、二子玉川。話題となっていたIMAXシアターで『シン・ゴジラ』を初鑑賞。夏休み時期ということもあってか、劇場には小学生から70代のご夫婦と思しき人まで、実に幅のある年齢層がいた。確認したいことがありすぎて、めったに購入しないパンフレットを求め売店に行くと、まさかの売り切れ。

  同月中旬、六本木。2度目の鑑賞のためにTOHOシネマズへ。六本木ヒルズの階段の横には、小さな子どもが列をなしていた。彼らのお目当ては、クレヨンしんちゃんとゴジラのフィギュア。ゴジラを見上げ、嬉しそうに微笑む様に、母親がスマートフォン向け写真に収めていた。ここで念願のパンフレットを入手。どうやらラスト1部だったようで、その後棚からパンフレットが姿を消していた。

  同月下旬、銀座。男性編集者2名と夕食。話題の中心は、『シン・ゴジラ』。ゴジラの身体より長いのではないかという尻尾の動きは「まさに猫だ」との意見に膝を打つ。確かにゴジラは猫的だ。その尾と頭のダブルヘッドの話から総理執務室のカーペットの質の高さまで、題材は事欠かず。

  9月初旬、有楽町。聖地とも言える日劇で3度目の鑑賞。年齢層はやや高めで、どうやら多くの人がリピーターであった模様。観客のリアクションが、0.5秒ほど早い……。

映画「シン・ゴジラ」の完成報告会見をする(左から)庵野秀明総監督、出演者の石原さとみ、長谷川博己、竹野内豊=2016年7月19日、東京・品川映画「シン・ゴジラ」の完成報告会見をする(左から)庵野秀明総監督、出演者の石原さとみ、長谷川博己、竹野内豊=2016年7月19日、東京・品川
  まさに席捲、といっていいだろう。庵野秀明総監督作品『シン・ゴジラ』は
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