体験者である田辺鶴瑛さんのドキュメンタリー映画「介護講談」が伝える心構え
2016年10月11日
介護には誰もが通る“修羅の道”があります。「どんな状態でもいいから一日でも長生きして欲しい」と願いながらも、思い通りにいかない介護の日々に押しつぶされ「この人さえいなければ」とふと頭をよぎる殺意。一瞬でもそんな想いを抱いてしまった自分は鬼になってしまったのかと後から押し寄せる“自責の念”・・・物理的な負担だけではなく精神的な葛藤と矛盾が介護する人を追い込んでいくのです。
介護保険制度がスタートして16年も経つのにも関わらず、後を絶たない介護や看護疲れによる介護殺人。埼玉県小川町では77歳の妻を殺害した83歳の夫が逮捕後に食事を拒否し病院で死亡するという事件がありました。
警察庁が殺人の直接の動機として「介護や看護疲れ」を発表するようになったのは2007年から。そして06年に施行された高齢者虐待防止法に基づき厚生労働省が介護を巡る死亡事例を公表するようになって10年あまり。年間40件から50件ほど介護殺人が起きていると言われていますが、この数字は氷山の一角でしかありません。
一方で心配なのは男性の介護です。私だけの杞憂ではないことは、介護殺人の加害者の7割が男性であるという数字が示しています。慣れない家事に介護、そして完璧にやりたいという想い、さらにプライドが邪魔をして周囲に相談できず、1人で抱え込んで社会と断絶し孤立化していく・・・。
「声をあげられる人はまだ幸せだ」私が介護や医療をテーマにコツコツ綴っているブログに書き込まれたコメントです。伝え手として1人でも多くの“声なき声”を掬い上げていかなければならないという想いを強くしています。
私が介護体験を語ると不思議と周りの人が「実は自分も」と打ち明けてくれます。介護で追い込まれる前に、身近な人に“実は”と語れるようにしたい。そのためのきっかけを一つでも多く作っていくこと・・・それが伝え手の私に出来ることだと思います。
今回ご紹介する映画「介護講談」も介護を語るきっかけの一つになることを願っています。自主上映の形で公開されている女性講談師・田辺鶴瑛さんが創作した自分自身の実母、義母、そして義父の3人の介護体験を元にしたオリジナル講談を収録したドキュメンタリー映画です。どうぞ一席お付き合い下さい!
元気な頃のお義父さんとは縁も薄く正直大嫌いだったという女流講釈師の田辺鶴瑛さん。具合が悪くなったお義父さんの面倒はもうみられないと訴えるのち添えの女性からの苦情電話を着信拒否するほど。
そんな鶴瑛さんが中学の頃から父親と折り合いが悪かった自分と重なりました。お酒に呑まれて卓袱台をひっくり返すのは日常茶飯事。母の介護が始まってもお湯も自分で沸かせないどうしようもない父・・・と悪口を言うと止まらないのでこの辺でやめておきますが(笑)
引き取る気は全くなかった鶴瑛さんでしたが「じいさんが居なければ夫と出逢えていなかった」とふと思い
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