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芸能ムラに反旗翻したSMAP、能年玲奈、JYJ

近代化が遅れていた業界で今年起こった構造転換の深層を考える

小野登志郎 ノンフィクションライター

 2016年は、SMAPが解散に至った騒動を見ればわかるように、芸能界がその構造を劇的な形で転換させていくことになる元年になるだろう。

 ここで壊れていくのというものには様々なものがあるが、その中で特に注目すべきなのは、壊れつつあるのは芸能界の、本質的に〝ブラック〟な構造であるということだ。

  芸能界や芸能事務所の全てが悪、悪徳事務所に支配されている、というつもりは毛頭ない。だが、芸能界の基本的な構造に問題がないとは言えない。

  紀藤正樹弁護士はブログで、芸能人が事務所に束縛される現状のありかたについて、「芸能人の事務所縛りは、日本に、はびこる巨悪の一つであると思っています」と述べ、「労働基準法上も、独占禁止法上も、不正競争防止法上も、多くの法的問題をはらんでいる」「基本的に事務所縛りの問題は、プロデュース料やアイデア料、著作権料などの金銭解決で行うべき」「日本の芸能界は近代化が遅れている」(2016年1月19日のブログより)と述べているが、この構造にメスが入る、というより、芸能人自身の手で破壊しつつあり、彼ら彼女らは村の遺制に造反しつつあるのだ。

 SMAP騒動でとくに強い印象を残したのはあの「謝罪会見」。1月18日のフジテレビ系バラエティ番組「SMAP×SMAP」での発言だ。あらためて読んでみると、頂点にあるスターたちの、ダークで底知れぬ複雑さを感じてしまう。

  「僕たちのことで、お騒がせしてしまったことを、申し訳なく思っております」(稲垣くん)

  「本当に沢山の方々に心配をかけてしまい、そして、不安にさせてしまい、本当に申し訳ございませんでした」(香取くん)

  「本当に申し訳ございませんでした。これからもよろしくお願いいたします」(中居くん)

  「ジャニーさんに謝る機会を木村くんが作ってくれて、今ぼくらはここに立てています。5人でここに集まれたことを安心しています」(草なぎくん)

  普段はリーダーとして、このような場合にはセンターにいるであろう中居くんが左端、要するに舞台でいう下手(しもて)に立っていたことなども、ファンだけでない人びとを戦慄させたが、圧巻は草なぎくんの、「ジャニーさんに謝る」というところだろう。公共の電波を使用し、自らが所属する事務所の社長に対して謝罪するという前代未聞の生放送だが、芸能界というのは、ここまでハラスメントが行き渡った世界なのかと、わたしだけでなく、多くの人が思ったことだろう。

  金や社会的地位があっても、このような「公開処刑」と一般に言われるほどのことがまかり通る世界に対して、わたしたちは夢を見ることはできなくなってしまうのでは、という危惧すらいだく。

 実際、BPO(放送倫理・番組向上機構)にこの会見を「パワハラ」として訴える動きすらあった。

 香取くんのいう「沢山の方々」も、ファンよりも利権関係者に対する謝罪なのではないか、というようにもとられかねない謝罪であった。

 それにしても、だ。

 また、所得の面もそのひとつだ。当然ながら、芸能界には富も名誉も手に入れた人間も多い。しかし一方で、芸能界に所属する人間では、社会的地位も保障もない、ワーキングプアとでもいうべき存在が多いことも事実だ。

 SMAP騒動で明らかになったのは、封建的慣行を受け入れハードワークに耐えれば富も名声も手に入る、という約束が崩壊したことだ。「国民的」な芸能人として20年以上活躍しても、事務所との関係が悪化すれば、これまでの業績は無視され、破壊されてしまいかねない。

  SMAP解散も、そういった観点から見ることができるだろう。

  この解散は、SMAPという「国民的芸能グループ」が終焉し、「国民的」という冠をつけられる芸能人自体が最終的にいなくなっていくプロセスを描いるのだろうか。今後の彼らから目を離すことはできない。

  そして、能年玲奈である。今は「のん」と名乗っているそうだが、

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