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世界初の4回転フリップジャンパー宇野昌磨の自信

「練習通りを試合で出す」。シニア2年目の成熟と煌めき

青嶋ひろの フリーライター

 昨シーズン(2015-2016)の宇野昌磨は、なかなか面白い形で1年を終えた。

 世界ジュニアチャンピオンのタイトルを携えての、シニアデビューシーズン。前半はグランプリシリーズで連続表彰台、初出場のグランプリファイナル3位、全日本選手権2位と、快進撃と言ってもいい充実ぶりだった。

 しかしメダルを期待された四大陸選手権では、「がんばろうとしたのに気の抜けた試合になってしまって」4位。その口惜しさを払拭(ふっしょく)しようと死に物狂いで練習し、臨んだ世界選手権では、「自分にプレッシャーをかけすぎて」7位。

 「あんなに練習したのに、世界選手権は何もできなかった。なんでだろう? もうがんばってもダメなのかもなあ……って。過去のことはすぐ忘れる僕が、世界選手権のことはずっと引きずりました」

ギネス記録で表彰され、観客に手を振る宇野昌磨20161001拡大公認大会初の4回転フリップジャンプ成功で、ギネスの認定証をもらった宇野昌磨=2016年10月1日、さいたまスーパーアリーナ
 そこまでなら、いかにも新人らしいほろ苦い1年だ。

 しかし昨季の宇野昌磨は、その後が面白い。

 「でも、やるしかないか……」と出場した最後の一戦、チームチャレンジカップ。なんと練習を始めたばかりの4回転フリップを試合で初成功させ、これが「世界初、史上初」の4回転フリップという、記念すべき達成になってしまったのだ。

 これには本人も、樋口美穂子コーチも驚く。

 「僕、実は、『世界初』になるなんて知らないで跳んだんです。そんな感じだったのに跳べちゃって、チームチャレンジはほんとに試合が楽しかった!」

 「せっかく練習で跳べるようになったし、こんな大会でしか挑戦もできない。入れようよ!ってノリだったのに、跳べちゃったんですよ! あの時の昌磨はもう、興奮しすぎて、むちゃくちゃいい顔で滑ってましたね。それまでの試合も、こういう顔で滑ってもらいたかったんだなあ、って思ったくらい」(樋口コーチ)

 自分を追い込んで結果が出ず、これ以上ないくらい打ちのめされた経験。試合を楽しみつくして成功を掴んだ経験。どちらか片方でも大きなものを、ふたつも同時に彼に味わわせるとは、いったい誰の采配だろう?

「練習」に裏切られるという、無慈悲な経験をして

 振れ幅の大きな経験値をしっかり抱え、充実した夏をすごし、迎えたのはシーズン2年目。2016-2017、彼が初めて迎えるオリンピックのプレシーズンだ。

 昨季のドラマチックな終わり方を見てしまうと、 ・・・ログインして読む
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筆者

青嶋ひろの

青嶋ひろの(あおしま・ひろの) フリーライター

静岡県浜松市生まれ。2002年よりフィギュアスケートを取材。日本のトップ選手へのインタビュー集『フィギュアスケート日本女子 ファンブック』『フィギュアスケート日本男子 ファンブック Cutting Edge』を毎年刊行。著書に、『最強男子。 高橋大輔・織田信成・小塚崇彦 バンクーバー五輪フィギュアスケート男子日本代表リポート』(朝日新聞出版)、『浅田真央物語』『羽生結弦物語』(ともに角川つばさ文庫)、『フィギュアスケート男子3 最強日本、若き獅子たちの台頭 宇野昌磨・山本草太・田中刑事・日野龍樹・本田太一」(カドカワ・ミニッツブック、電子書店で配信)など。最新刊は、『百獣繚乱―フィギュアスケート日本男子―ソチからピョンチャンへ』(2015年12月16日発売、KADOKAWA)。

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