田中敏恵(たなか・としえ) 文筆家
1969年生まれ。文芸誌編集を経てフリーランスに。文芸、食、旅、建築などライフスタイル分野の記事や、国内外で活躍する著名人たちへのインタビューを雑誌や新聞に寄稿。2006年より取材を開始したブータン王国に関する講演活動も行う。著書に『ブータン王室はなぜこんなに愛されるのか~心の中に龍を育てる王国のすべて』、共著に『未踏 あら輝~日本一予約の取れない鮨屋』。
移動は夜、朝起きたら次の帰港地という利点
盛り土問題で大揺れに揺れている東京都豊洲新市場。その向かいに位置する晴海埠頭に、多くの外国人観光客がやって来ているのをどれだけの人が知っているのだろう。ここは東京の海の玄関口、そう船で日本へやってくるクルーズ客である。
10月初旬は小規模客船ポナンが停泊。グレーがかったベージュと白で統一された、フランス生まれらしいシックなクルーズ船は、北極からロシアを経由して日本へやってきた。東京だけでなく金沢大阪など、国内を周遊した後、東南アジアへと舵をとることになっており、船室は早い段階で完売だったという。
このポナンだけでなく、実は日本には数多くの客船がやってきている。また旅行業界や旅好きの人でないと、なかなか知り得ないことかもしれないが、クルーズは年々注目を集めている。ラグジュアリー船からカジュアルなファミリー向け、数千人の乗客を収容できる「動くマンション」のような船や100人ほどの小さな船まで、規模の異なる数多くの船が春と秋の観光シーズンを中心にやってくるのである。
このクルーズ旅の大きな特徴といえば、客室ごと移動してくるということだろう。したがって、国や地域をまたいでいても、ホテルのようにチェックイン・チェックアウトが不要である。しかも
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