電通新入社員の過労死認定から考える
2016年11月09日
今回の「電通社員・過労死認定」に関しまして、亡くなられた方のご冥福を心よりお祈りいたします。
この出来事をきっかけに、電通本社と支社のいくつかに立ち入り調査が入り、これまでひそかに囁かれながらも表面化しにくかった電通を中心とした広告代理店業界の長時間過酷労働の実態が表面化されつつある。
それも踏まえ、この事件に関してはすでに多くの報道や論評があるが、僕の仕事が不登校やひきこもり、貧困の子ども若者の支援であることから、日本の子ども若者問題と関連させてここでは考えてみたい。
また、彼女ら彼らの「将来」に関するモチベーションをどう構築してあげればいいかを我々大人サイドは考える必要があるということだ。
スーパーエリートが過労死してしまう国に住む子どもや若者たちにとって、東大や電通といった学歴社会の頂点に立ったあとでも「過酷環境」が待っているということは、彼女ら彼らが抱く「夢」とどう関係していくのだろうか。
子どもたちは、若者たちは、こうした「スーパーエリートが過労死する国」に対して諦めてしまうだろうか。
それとも、この国の特性を見極めた上で、変革の力の一翼を担ってくれるだろうか。
こうした過労死を導く要因として、以下の原因があると僕は捉えている。
1.「メンバーシップ」制をベースにしたドメスティックな職場環境
2.「ミドル・アップダウン」制単位で動く決定機構
3.1と2を背景にした、過剰な会議・稟議・ホウレンソウ
1.は、池田信夫氏らにこれまで度々指摘されてきた。たとえば最近の池田氏のブログには以下のような一節がある(電通「過労自殺」事件にみる労働生産性の低さhttp://agora-web.jp/archives/2021985.html)。
【資料づくりに朝4時まで残業するという昭和的な仕事のやり方が、日本のホワイトカラーの労働生産性が低い原因だ。(略)日本の職場は上司や同僚との長期的関係で情報を共有することが目的なので、ネットワークでできる仕事でも大部屋でやる】
ここで言われる「長期的関係」が、正社員中心の「メンバーシップ」組織のことで、安定した雇用契約の中での、ドメスティック(内向きで閉鎖的)で非生産的でハード(パワハラ・セクハラを含む)な職務内容により、組織の底辺にいる人々(あるいは中間的立場にある人)が追い詰められる。
これをベースにして、さらに「ミドル・アップダウン」型決定機構が一人ひとりの社員を追い詰める。つまり課長以下のタコツボ「現場」决定組織中心で構成される独特の組織形態のなかで、「現場」の判断や行動が求められる。
日本特有の、反トップダウン、中心不在、全体の責任所在の曖昧さから、ミドル単位の決定機構が結果的に力を持ち、その「現場」に立つ人々(今回の事件のように若い人々も珍しくない)に過重な判断と責任が覆う。
丸山真男をわざわざ引いて組織内で論理構成せずとも、長年かけて形成されたその「空気」は簡単には改善されない。そこでの「中心の不在」をカバーするように、「組織内ミニ組織」つまりは「現場」の力によって日本は高度なレベルを維持しているだろう。それは、「現場」への比重の大きさとなる。
僕自身、子ども若者支援に関して、たくさんの行政の委託事業を運営してきて感じるのは、
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