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高齢ドライバーから免許を取り上げるべきなのか

若者の方が高い事故率、高齢者向けの免許と自動車の開発を

和田秀樹 精神科医

事故を起こした軽トラックは横転し荷台の物品が道路上に散乱した=2016年10月28日、横浜市港南区、周辺住民提供拡大事故を起こした軽トラックは横転し荷台の物品が道路上に散乱した=2016年10月28日、横浜市港南区、周辺住民提供
 高齢者ドライバーの事故が話題になっている。

  10月28日に横浜市港南区で、87歳の男性が運転していた軽トラックが、集団登校していた児童の列に突っ込み、小学生9人を含む12人と接触。小学1年の児童が死亡した。今月の12日には、立川市で83歳の女性が運転していた車が暴走し、2人の命を奪ったことが大きなニュースとなり、翌13日には、東京都小金井市と千葉県長南町で80歳代の運転者による交通死亡事故があった。

  TBSのテレビでも、相次ぐ高齢者ドライバーの事故に怒りの声の特集をしていた。

  日本の場合、統計よりニュースで世論が作られ、それによって政策が変わることが珍しくない。飲酒運転の厳罰化も、飲酒死亡事故が増えているからではなく、3人の子供がなくなったという痛ましい事件が契機だった。かつて教育再生会議というのがあった。ゆとり教育などで低下した学力をどう立て直すのかや、道徳教育をどうしていくのかを話し合う会議だったはずなのだが、発足直後に福岡で中学2年生がいじめを苦に自殺するという事件が発生して、いじめ対策が主なテーマに変わった感があった。

  フィンランドなどでは高校生などの銃の乱射事件などがときどき起こるのだが、珍しい「事件」のために教育政策を変えるなどということはしない。学力の調査をもとに政策が考えられる。

 ニュースというのは珍しいからニュースになるという側面がある。15歳の少女には気の毒なことだが、通常の成年が加害者だった場合は、これほど大きな取り上げられ方はしなかった可能性が高い。

 しかし、ニュースは統計より人々の感情を揺り動かすから政策決定へのパワーになりやすい。ただ、統計など社会の趨勢に合わせて政策決定をするのと比べて、珍しいことをなくすための政策決定というのは、「珍しくない」人のデメリットにつながることは少なくない。

  もちろん、高齢ドライバーの場合は、統計上も危険であることが明らかになっている。

  平成26年の統計では、免許保有者10万人当たりの死亡事故は、30-39歳が3.41件に対して、70歳以上は7.37件、75歳以上になると10.53件となっている。昨年のデータでは、これが85歳以上だと18.17件という話になるという。

  数字を見ると、85歳以上のドライバーは、30代のドライバーの5倍以上危ないということになるのだが、それでも1万人に2人に満たないのだ。85歳の人の平均余命は男性で約6年、女性で8年だから、死ぬまで運転を続けていても、1000人に1人程度、逆にいうと一生死亡事故を起こさないドライバーが1000人中999人ということになる。

  リスクが一般人口より大きい以上、やはり運転させるべきでないというのなら、75歳以上の人より16-24歳の人のほうが死亡事故割合が高い(10万人あたり7.66件)のだから、免許を18歳からでなく、25歳から与えろという話になってしまう。

  そもそも自動車というある種の凶器を禁止しないのは ・・・続きを読む
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筆者

和田秀樹

和田秀樹(わだ・ひでき) 精神科医

1960年、大阪市生まれ。東大医学部卒。現在、国際医療福祉大教授、和田秀樹こころと体のクリニック院長、川崎幸病院精神科顧問、緑鐵受験指導ゼミナール監修。専攻分野の老年精神医学、精神分析学のほか、大学受験を中心とした教育制度・政策、自ら監督をつとめたことがある映画についての発言も多い。著書に『感情的にならない本』『心と向き合う臨床心理学』など。

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