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羽生結弦に期待するのは4回転4本ではない(上)

ジャンプにこだわるプログラムでいいのか

青嶋ひろの フリーライター

 フィギュアスケートシーズン開幕前。夏のアイスショーを取材している時期に、海外の記者とこんな話をした。

 「男子シングルの4回転時代は、いったいどこまで行くのだろう? 現行ルールでは、4回転を跳べば跳ぶほど点数が出る。どの選手もジャンプ重視になってしまい、プログラムを充実させるための練習時間も、本番でのジャンプ以外への集中力も削られているのが残念。それに比べれば、ジャンプに偏りなく技術も表現もバランスよく競っている女子の方が、楽しんで見られることが多いのではないか」

 と、これは筆者の意見。一方、海外の記者は、「私はまったく逆に感じている」と言う。

 「伊藤みどり、クリスティ・ヤマグチ(アメリカ)の時代から、ジャンプにほとんど進歩のない女子は、スポーツとしての面白味がない。しかしここ数年の男子の進化は、ほんとうに見ごたえたっぷりだ。こんな時代を引っ張る選手をこそ、私はアスリートとして評価したい」

 フィギュアスケートの見方、楽しみ方として、どちらが正しいわけではなく、どちらもあり、なのだろう。選手たちにしても、ジャンプ急進の時代をひたすら推し進めようとする者がいれば、4回転だけで勝負が決まる現状に疑問を抱く者もいる。

4回転競争に戸惑う選手たち

 10月、ジャパンオープン記者会見にて。羽生結弦が4回転ループを、宇野昌磨が4回転フリップを成功させた件を引き合いに、「あなたも何か、新しいジャンプにチャレンジしているのか」と尋ねられた現世界チャンピオン、ハビエル・フェルナンデス(スペイン)は、こう答えている。

 「ユヅルやショウマの挑戦は、驚くべきものだと思う。でも僕のフリーは、今の4回転トウループ1本、4回転サルコウ2本という構成、難度で十分だ。これ以上4回転の練習に時間を費やすよりも、僕はステップ、スケーティング、スピード、振り付けといった面を、もっと向上させたいんだ」

 また、昨シーズン(2015-16)末に4回転フリップを成功させ、この時代を引っ張る者のひとりと見られている宇野昌磨の話も、興味深い。

 「男子の4回転……今年はいったい、どうなるんでしょうね? もう僕、ついていけないですよ。いっそ、4回転は3回までって、決めてくれないかなあ(笑)。僕はもっと違う部分を磨いて、違う部分で競っていきたいのに」

 渦中にいる選手たちも、歯止めのかからない4回転競争に戸惑い、時代に立ち向かう術をそれぞれ模索しているようだ。

 そのなかにあって、ひたすらぶれないのが羽生結弦である。

エキシビションでリンクを一周する羽生結弦拡大優勝したNHK杯のエキシビションで

スポーツとして、もっとも賞賛に値する選手、羽生結弦

 昨シーズン、ショートで4回転2本、フリーで4回転3本を完璧に決めたプログラムで叩き出したのは330.43点(15年12月、グランプリファイナル)という前人未到のスコア。現状維持でも十分、王者の地位を守れる男だ。その彼が今季は、「フリーで4回転4本」という荒業に挑戦している。 ・・・ログインして読む
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筆者

青嶋ひろの

青嶋ひろの(あおしま・ひろの) フリーライター

静岡県浜松市生まれ。2002年よりフィギュアスケートを取材。日本のトップ選手へのインタビュー集『フィギュアスケート日本女子 ファンブック』『フィギュアスケート日本男子 ファンブック Cutting Edge』を毎年刊行。著書に、『最強男子。 高橋大輔・織田信成・小塚崇彦 バンクーバー五輪フィギュアスケート男子日本代表リポート』(朝日新聞出版)、『浅田真央物語』『羽生結弦物語』(ともに角川つばさ文庫)、『フィギュアスケート男子3 最強日本、若き獅子たちの台頭 宇野昌磨・山本草太・田中刑事・日野龍樹・本田太一」(カドカワ・ミニッツブック、電子書店で配信)など。最新刊は、『百獣繚乱―フィギュアスケート日本男子―ソチからピョンチャンへ』(2015年12月16日発売、KADOKAWA)。

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