経済面で追い込まれる大阪、万博建設費について府は「全国の企業から」と皮算用
2016年12月26日
中央部は雑草が生い茂り、茶色っぽい。水たまりのような水面がところどころにある。海の青色とは違い、くすんでいる。それがいっそう「放置された土地」という印象を強めている。
未明の国会でカジノ解禁法が成立した12月15日、カジノと国際博覧会(万博)の候補地になっている大阪市此花区の人工島、夢洲(ゆめしま)を、ヘリコプターで上空から見た。
埋め立てが完了すると約390ヘクタール。甲子園球場約100個分の広大な土地だ。
天気はよく、見晴らしもいい。それでも、目立った色といえば、キャラメルの箱のように護岸に積み上げられたコンテナと、ずらりと並ぶ太陽光発電パネルくらい。道路を走るのは大型のコンテナ車ばかりだ。
かなたに、高さ300メートルのあべのハルカスや、通天閣がうっすらと浮かぶ。
大阪市の都心から約10キロだが、あまりに寂しい。本当に万博やカジノができるのだろうか。
都会とは見事に切り離された異空間の上を2、3周しても、一帯が人でにぎわう光景は想像できなかった。
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参加国150国・機関。来場者3000万人以上。経済波及効果は約6兆4千億円――。
2025年開催の万博誘致にむけ、大阪府はこんなそろばんをはじく。
府がまとめた基本構想案によると、テーマは「人類の健康・長寿への挑戦」。関西圏にある医療産業や、大学、研究機関の技術を生かし、泊まり込んで健康生活を体験する「究極健康ハウス」や、くらしを豊かにするロボット、自動運転などを体験できる「実証ゾーン」などをつくる、という。
孤島のような地へのアクセスは、となりの咲洲から地下鉄中央線を海底で延伸するうえ、シャトルバスなどでの来場を想定している。
ただテーマ自体が地味で、一般受けするのか、おおいに疑問だ。
なによりお金は誰が出すのか。
府の案では、会場建設費は1200億~1300億円。愛知万博のときは国、地元、経済界がそれぞれ等分に負担した。しかし関西財界は開催に賛成はしつつ、愛知万博のトヨタのように先導役になるような企業はない。
府万博誘致推進室は「これは日本の万博なので、関西だけではなく全国の企業の協力をもらいたい」「五輪のようなスポンサー方式も考える」という。そう簡単にいくだろうか。
地下鉄の延伸は別に640億円かかる。これも「島に進出する事業者に負担をお願いする」。
景気の先行きが見通せない昨今、絵に描いたもちに思えてならない。
万博開催は政府が博覧会国際事務局(BIE)に、来年5月22日までに届け出る。12月16日、経済産業省は有識者らによる検討会の初会合をひらき、国としての立候補の検討をスタートさせた。
フランスもパリの立候補を表明しており、開催地は18年11月のBIE総会できまる。
「ワクワク感が持てるテーマにしてほしい」
初会合では、有識者の1人からそんな厳しい意見が出た。そのとおりだと思う。
コンセプトから大胆に練りなおすぐらいの発想が必要だろう。
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投資規模は約7700億円。20年開業を目標。
経済効果は、開業前までに累計で1兆4711億円。雇用創出効果は9万8000人――。
関西経済同友会が発表した統合型リゾート(IR)についての試算だ。
シンガポールなど海外のカジノを視察してきた同会は、矢継ぎ早に提言を続ける。夢洲にIRができれば
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