杉浦由美子(すぎうら・ゆみこ) ノンフィクションライター
1970年生まれ。日本大学農獣医学部(現・生物資源科学部)卒業後、会社員や派遣社員などを経て、メタローグ社主催の「書評道場」に投稿していた文章が編集者の目にとまり、2005年から執筆活動を開始。『AERA』『婦人公論』『VOICE』『文藝春秋』などの総合誌でルポルタージュ記事を書き、『腐女子化する世界』『女子校力』『ママの世界はいつも戦争』など単著は現在12冊。
『相棒』再放送も再開で、疑惑は「白に近いグレー」扱い
声優の三ツ矢雄二(62)がテレビ番組で自分がゲイであることをカムアウトした。アニメ『タッチ』の上杉達也役をはじめ、多くの人気キャラクターの声を担当してきた大御所の有名声優だ。また、ミュージカルの演出家としても成功し、何十年もエンターテイメント業界の第一線で活躍してきた実力者だ。
その彼が地上波のお昼のテレビ番組で、セクシャリティを告白したことは反響を呼んだ。本人も「周囲の人は、全員知っている」というように、ファンの多くも認識していたことだと思う。それでも、本人が公にカムアウトすれば、注目が集まる。
今回の三ツ矢雄二のカムアウトで思い出すのが、去年末に俳優の成宮寛貴(34)が衝動的に芸能界を引退した騒動だ。
2016年12月16日号の『FRIDAY』(講談社)で成宮がコカインらしき物の前で座っている写真が掲載され、彼の友人と名乗るAという人物が、成宮のコカイン常用を主張した。芸能人にとって薬物使用疑惑は致命的なものだ。当初、成宮や所属事務所は「事実無根」とし、週刊誌を法的に訴えるといったが、その後、一転し、成宮は芸能界引退を宣言した。
そのとき、メディアに配られた直筆のコメント文では、薬物使用については触れず、「この仕事をする上で人には絶対知られたくないセクシャリティな部分もクローズアップされてしまい」とあり、「今後これ以上自分のプライバシーが人の悪意により世間に暴露され続けると思うと、自分にはもう耐えられそうにありません」とも書かれていた。
このコメント文を読み、多くの人たちが成宮に同情を寄せる一方で、テレビのバラエティ番組では、芸能人やコメンテーターが「彼のセクシャリティはみな知っていた」「セクシャリティが公になっても、芸能界を辞める必要はない」という趣旨のコメントが並んだ。彼らは、成宮が薬物使用疑惑から世間の目を背けようとして、セクシャリティの問題について強調しているのでは、と懐疑的な姿勢を示したのだ。
ところがだ。事情は変わってきた。薬物報道直後に、テレビ朝日は成宮が出演していたドラマ『相棒』の再放送を取りやめたのだが、翌月には再開したのだ。他の成宮出演ドラマも再放送が放映されている。再放送にもスポンサーはつくわけで、放映するからには、
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