杉浦由美子(すぎうら・ゆみこ) ノンフィクションライター
1970年生まれ。日本大学農獣医学部(現・生物資源科学部)卒業後、会社員や派遣社員などを経て、メタローグ社主催の「書評道場」に投稿していた文章が編集者の目にとまり、2005年から執筆活動を開始。『AERA』『婦人公論』『VOICE』『文藝春秋』などの総合誌でルポルタージュ記事を書き、『腐女子化する世界』『女子校力』『ママの世界はいつも戦争』など単著は現在12冊。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
”アウティング”事件と、今回の場合の違いは
3回連続で、声優、三ツ矢雄二が自らのセクシャリティをカムアウトしたことをきっかけに、成宮寛貴の引退について考え直している。前回1回目では、2017年1月以降、成宮が出演しているドラマが複数再放送されていることなどを考えると、薬物使用疑惑は、現状、「白に近いグレー」であり、この問題から逃げるために引退したとは推測できないと書いた。ならば、なぜ、彼ほどのキャリアをもつ俳優が引退したのか。2回目以降では、なにが彼を引退に追い込んだのかを考えよう。
三ツ矢雄二はエンターテイメント業界の実力者なわけで、セクシャリティが仕事に影響することはまずない。その彼が今まで自分のセクシャリティを公にしなかったのは、会社勤めの実兄への配慮だったという。兄が定年退職したので、もういいだろうと、今回のカムアウトにつながったという。
キャリア的にはゲイであることを公にしてもマイナスにならないが、外の世界ではまだまだ偏見もある。サラリーマンである兄に迷惑がかかっては、という配慮があったようだ。
セクシャリティを公にするか、否かは、あくまでも当事者の意思で決めるものだ。テレビを見れば「オネエタレント」と呼ばれる人たちがたくさん出ている。彼らはセクシャリティを公言し、活躍しているわけだ。また、一般企業のサラリーマンでも、保守的な社風の大企業に勤めていても、ゲイであることをカムアウトしている男性もいる。
一方で、自由な社風の外資系企業に所属し、「みんな僕のセクシャリティについては気づいており、配慮もしてくれているけど、僕自身は絶対にカムアウトしない」という男性もいる。多様だし、どう考えるかには個人差がある。
成宮寛貴が幼い頃に親を亡くし、高校にも進学せず、弟を育て上げたのは有名な話だ。10代の頃、彼は新宿二丁目のゲイバーに身を置き、
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