メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

RSS

巧妙になる特殊詐欺の最新事情

海外のだまし拠点移動、発信番号改変、防犯カメラのない場所探し……

緒方健二 朝日新聞西部報道センター記者

東京都新宿区にある特殊詐欺グループの拠点から警視庁の合同創作本部が押収した電話やパソコンなど=2014年11月13日、品川署拡大東京都新宿区にある特殊詐欺グループの拠点から警視庁の合同創作本部が押収した電話やパソコンなど=2014年11月13日、品川署
 お年寄りをだまして現金を詐取する卑劣な犯罪、振り込め詐欺などの特殊詐欺が様変わりしています。

  中国から日本にだます電話をかけていた組織が拠点を別の国に移し始めています。発信元の電話番号を実在の警察署に変える手口も出てきました。暴力団主導の組織で手法を習得した「非・組員」が独立、新たな集団をつくり、詐欺組織は増える一方です。

  防犯カメラのない場所を調べ上げ、そこをお金の受け取り場所に設定する組織もあります。捜査関係者や、詐欺組織にいた暴力団組員らを取材しました。

被害は依然深刻

  警察庁によると、特殊詐欺の被害は2016年に全国で1万4151件(前年比327件増)あり、被害額は406億3000万円(前年比75.7億円減)に上ります。警察幹部は「一時期より減ったが被害は依然深刻」と話します。年間に数百億円が電話1本でだまし取られる事態が長く続いている世の中は異常です。

拠点を中国から東南アジアへ

  中国発の詐欺は、日本の暴力団が中国や台湾の犯罪集団と組んで数年前に始めました。

  上海や福建省のマンションなどに設けたアジトから、日本でスカウトした日本人に、日本へ電話を掛けさせる手口です。かつて中国の拠点で「掛け子」をした男は私の取材に「朝から夜まで部屋にこもり、掛けた電話は日に500件を超えた」と振り返ります。男らの証言で書いた記事が以下の「参照」です。

 (参照)詐欺実態に詳しい暴力団元幹部は「最近、その拠点をフィリピンなど東南アジアの国に移している」と明かします。

  中国の犯罪事情に詳しい日本の警察幹部も同じ情報をつかんでいました。ですが、まだ摘発には至っていません。移動の理由について、この警察幹部は「中国当局の摘発強化が影響した」とみています。詐欺の標的が最近は中国人に及び、中国人被害者が増えたための摘発強化だそうです。参考までに中国で特殊詐欺は「電信詐騙」と呼ばれています。

  移転先は「通信事情がよく、家賃も安く、捜査当局の警戒がまだ緩いこと」(暴力団幹部)を基準に選ぶそうです。
詐欺集団がやることは同じです。日本人の「掛け子」に警察官役や銀行員役を割り振り、日本のお年寄りをだますのです。新拠点の詳細を鋭意調べています。

発信元は実在の警察署

  発信元の電話番号を偽る手口も出てきました。

  「ある小道具を使うと、実在の警察署や弁護士事務所から掛けたように装える」と暴力団関係者は話します。だます相手に不審がられても ・・・続きを読む
(残り:約2011文字/本文:約3097文字)

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。
Journalismの記事も読めるのは全ジャンルパックだけ!


筆者

緒方健二

緒方健二(おがた・けんじ) 朝日新聞西部報道センター記者

朝日新聞社会部員(組織暴力専門記者)。1958年大分県生まれ、同志社大卒。毎日新聞社を経て88年入社、92年東京本社社会部。警視庁警備・公安、捜査1課、国税などを担当、99~2004年警視庁キャップ。東京社会部デスクを経て、04年から警察・事件担当の編集委員。地下鉄サリンなど一連のオウム真理教事件のほか数多の殺人、贈収賄、暴力団犯罪などを取材。17年4月から西部報道センター。

緒方健二の新着記事

もっと見る