杉浦由美子(すぎうら・ゆみこ) ノンフィクションライター
1970年生まれ。日本大学農獣医学部(現・生物資源科学部)卒業後、会社員や派遣社員などを経て、メタローグ社主催の「書評道場」に投稿していた文章が編集者の目にとまり、2005年から執筆活動を開始。『AERA』『婦人公論』『VOICE』『文藝春秋』などの総合誌でルポルタージュ記事を書き、『腐女子化する世界』『女子校力』『ママの世界はいつも戦争』など単著は現在12冊。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
マネージメントを”ブラック”と決めつける論調への違和感
女優の清水富美加(22)が出家して、宗教法人『幸福の科学』の活動に専念するという。引退ではなく、教団が製作する映画には出演する可能性があると発表されたが、所属芸能事務所を通した仕事はもうしない意向のようだ。このニュースを耳にして意外に感じた人も多いのではないだろうか。なぜなら、清水富美加は若手女優の中でも昇り調子の売れっ子だからだ。NHK朝の連続ドラマ『まれ』で知名度をあげ、その後もドラマや映画、バラエティ番組でも活躍しており、その仕事ぶりには逸材だと感じさせるものがあった。
女優、高畑淳子の長男で元俳優の高畑裕太が例の事件を起こす前に、バラエティに出た際、「(高畑裕太を)嫌い」「私の髪についたご飯粒を食べた」という話を清水富美加がVTR出演で嫌悪感や恐怖感を豊か表現しながら披露し、スタジオで大きな笑いをとっていた。清純派そのものの可愛らしい顔をした若い女優が、毒舌トークを繰り出す姿は非常に面白かった。女優にはトークが苦手な人も多いが、清水はフリートークも得意なようで、タレントのベッキーが降板した『にじいろジーン』の後任の座も射止めていた。
清水は正統派美人というよりは親しみが持てる可愛らしい顔立ちで、同性からも反発されないタイプだ。今後はさらに活躍が期待されていた。そんな旬の若手女優がどうして仕事を捨て、宗教者として生きると思い立ったのか。
『幸福の科学』の発表によると、所属芸能事務所で清水富美加が過酷な労働条件を強いられていたとのことだ。
『仮面ライダーフォーゼ』(テレビ朝日系)に出演していた2011年当時、月給5万円であったことや、本人の意に反するブルマやスクール水着を着用する仕事を入れられたという。これに対しては、事務所は反論をしていた。女性マネージャーと清水本人が話し合って仕事は決めていったと説明している。
タレントが芸能事務所から独立する騒動が増える中で、誤解したままの報道も多いように思う。私は毎日あるラジオ番組のエコノミストの時事解説を聞いているが、いつも冒頭では経済や政治以外の話題に触れる。先日は清水富美加の出家騒動を取り上げていた。まるで現状の給与が月5万円というような説明をし、それを前提にエコノミストもコメントをしていた。
大手メディアグループ傘下の歴史あるラジオ局が放送する情報番組だったので、その勘違いに驚いた。また、事務所側を一方的に”ブラック”とする論調の報道にも
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