サッカーW杯アジア最終予選スタートから半年でついに首位浮上、激動の2連戦の価値
2017年03月31日
約6万人の大観衆で埋まった埼玉スタジアムが大きくどよめき、まるで地鳴りのような音が客席に響き渡ったのは4得点のゴールシーンではなかった。23日、アウェーで行われたUAE戦(2-0)に続く2連戦の今シリーズを象徴するシーンでもある。
4点を失ったタイは、それでも試合を決して諦めない。終了間際にタイの鋭いカウンター(速攻)を受け、DF長友佑都が一度はセンタリングをクリアしたものの、このボールが運悪く自陣に。長友はシュートを防ごうと相手を倒しタイのPKとなった。
しかし所属クラブ「メッス」では出場機会がなく、代表での先発も1年ぶりのGK川島永嗣の表情には自信がみなぎり、相手を飲み込む強いオーラが漂っていたようだ。完全にコースを読み切ってシュートを防いだ瞬間、スタジアムはこの日、4つのゴールシーンをはるかに凌ぐもっとも大きな歓声に包まれ、興奮や安堵感など様々な感情があふれ出る異空間が生まれた。
所属クラブで試合に出場せず、一度は消えたかに見えたベテランGKの代表での堂々たる復活が、大一番の連戦を首位浮上への90分に変えてみせた。
「この連戦で監督が自分を使う決断にはリスクがあったと理解している。試合には出ていなかったが集中力は錆びないと思った」
しかし後半戦スタートの2試合を終えて勝ち点6、得点6、失点0を積み重ねて5勝1敗1分け、勝ち点16に伸ばして出場圏内で足固めした成果に「融合を確信した」と、西野朗技術委員長が称賛する底力を示す結果となった。
様々な隔たり、ギャップを融合したのみならず、今野を起用した際には、山口蛍を通常のポジションから下げて、今野と香川真司を置くシステムを採用し、これが今野の2点目につながった。
タイ戦では必ずしも成功はしなかったが、酒井高徳と山口のダブルボランチといった「新・オプション」を加えたのも大きな収穫だ。本来右サイドで攻撃を作った本田圭佑の位置には、2戦連続で23歳の久保裕也を起用。所属するベルギーのヘントでの活躍通り、2試合で自ら2得点、3点をおぜん立てし後半戦に勢いをつけた。
ハリルホジッチ監督が時には大胆でリスクを伴うようにさえ見える起用、オプションの採用を行うその「根拠」をUAE戦前に取材している。監督はインタビュー中(3月上旬)、「持ってきて欲しい」とわざわざスタッフに告げ、A3より大きめのリストをかざして説明をした。もちろん名前は見せていない。
監督はフィールドプレーヤー51人、GK5人、合計56人の日本代表候補リストを昨年の最終予選前半戦最のサウジアラビア戦後に作成したという。選手発表前、30人に絞っている。選手が
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