メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

RSS

大部屋の役者を束ねた渡瀬恒彦の素顔

京都の撮影所で慕われた男気とやさしさ

薄雲鈴代 ライター

テレビドラマ「おみやさん」に主演していた渡瀬恒彦さん=2011年4月、京都市中京区拡大テレビドラマ「おみやさん」に主演していた渡瀬恒彦さん=2011年4月、京都市中京区
 「賀春 おめでとうと、ありがとうを申し上げます」

 こころに響く健筆で書かれた一枚のはがき。今年の元旦に俳優井上茂のもとに届いた年賀状である。差出人のところには渡瀬恒彦と墨痕あざやかだ。

 「この年賀状をもらったときはドキッとしました。毎年もらうものとはちょっと違ったから。短文だけれど、このなかに込められた思いに、心騒(ざわ)めいていました」と井上さん。

 毎年、宛名から文面まで、本人の直筆で律儀に綴られていたという。

 渡瀬さんと井上さんの出会いは今から43年ほど前、『影同心』(MBS 東映)というテレビ映画である。渡瀬恒彦、山口崇、金子信雄主演、奉行所では役立たずの昼行燈の同心が、実は影の刺客という物語で、『必殺』の向こうを張った時代劇であった。

  初対面の挨拶のとき、井上さんは「ゆうき哲也の弟の井上茂です」と名のった。当時チャンバラトリオで人気を博していた兄の名を言ったのだ。すると「それは違う、あなたは井上茂でしょ」と一蹴。誰かの弟ではなく、あなたはあなた自身。ここに、渡瀬さん自身の兄渡哲也とは一線を画す気概を見たと井上さんは語る。

ピラニア軍団の束ね役

  1970年代、東映京都撮影所には、命知らずの役者たちで溢れていた。川谷拓三、野口貴史、岩尾正隆、志賀勝……主役を食う斬られ役と言われていた。三度の飯より映画好き、さらに底なしのうわばみで、酒がらみの武勇伝は数知れない。

 無類の酒好きなのに忘年会などどこからもお声がかからず、ならば自分たちで飲み会をしようよということで集まったのが最初であった。 映画の画面を埋める役者‘埋め助’でクレジットされることもない大部屋役者たちと、室田日出男、小林稔侍、片桐竜次、成瀬正孝といった東映の俳優が次々加わり、ピラニア軍団という俳優集団が結成された。

  その強者揃いの束ね役で発起人が渡瀬恒彦だった。破天荒な役者たちをおもしろがり ・・・ログインして読む
(残り:約1387文字/本文:約2230文字)

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。
Journalismの記事も読めるのは全ジャンルパックだけ!


筆者

薄雲鈴代

薄雲鈴代(うすぐも・すずよ) ライター

京都府生まれ。立命館大学在学中から「文珍のアクセス塾」(毎日放送)などに出演、映画雑誌「浪漫工房」のライターとして三船敏郎、勝新太郎、津川雅彦らに取材し執筆。京都在住で日本文化、京の歳時記についての記事多数。京都外国語専門学校で「京都学」を教える。著書に『歩いて検定京都学』『姫君たちの京都案内-『源氏物語』と恋の舞台』『ゆかりの地をたずねて 新撰組 旅のハンドブック』。

薄雲鈴代の新着記事

もっと見る