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死刑確定でも報道には違和感が残る(上)

真面目に取材していた記者たちと、木嶋佳苗被告への先入観優先報道の落差

杉浦由美子 ノンフィクションライター

 首都圏連続不審死事件の被告、木嶋(土井と改姓)佳苗(42)の上告審判決が4月14日にあり、最高裁第2小法廷は、被告の上告を棄却し、1・2審の死刑判決が確定する。

  木嶋被告が2009年に東京、千葉、埼玉で練炭自殺に見せかけ、3人の男性を殺害したとされる事件だ。

判決理由を聞く木嶋佳苗被告=2012年4月13日、さいたま地裁、絵と構成・仲澤瑞希拡大判決理由を聞く木嶋佳苗被告=2012年4月13日、さいたま地裁、絵と構成・仲澤瑞希
  2012年に行われた第1審の際に、私はさいたま地裁に通って、月刊「文藝春秋」傍聴記を書いた。

  記者という仕事についていると、様々な人に会うことができる。世界一の中華鍋を作る町工場の社長から、国会議員、AV女優、直木賞作家、そして、今をときめく芸能人たち。

  しかし、私に最も強い印象を与えたのは、傍聴席から見た木嶋佳苗の姿だった。なぜかというと、こちらの先入観とまったく違う姿だったからだ。被告席に座る木嶋は「女子大の家政学部の准教授」といった風情で、美人ではないが、上品で知的な女性だった。あの容姿だから男性たちは騙されたのだ。真面目に傍聴を続けていた新聞社の記者たちは口々に「悪人には見えない」と言っていた。

1審時の報道の過剰な盛り上がりはなんだったのか

  しかし、1審時、メディアでの木嶋の扱いは違うものだった。毎回違う服を着ている。ブランド物を身につけ、胸の開いた服で胸の大きさを強調している等々……。とても派手でセクシーな印象で報じられた。

  一応突っ込ませていただくと、胸の開いた服を着るのは痩せてみえるからだ。太めを気にしていれば、胸が開いた服を多く持つようになる。また、ブランド物の服といってもネットオークションで買えば数千円で買えるような古い型のものだった。木嶋は手持ちの服を着ていただけのように見えた。これは彼女が法廷で弱い立場にいたことを示していた。

  通常、裁判で被告はダークカラーのスーツを着用する。木嶋はスーツをもっておらず、かつ、弁護側が「スーツを着なさい」というアドバイスもしなかったのだと簡単に想像できる。饒舌な検察に対して、弁護側はほとんど発言もなかった。一方的に検察が裁判を進めていった。

  むろん、ジャーナリズムは「客」がいる商売なので、面白おかしく報じるのは当然なのだが、それによって、裁判が注目を集め、それが判決にも影響していくことがあるとしたらそれは怖ろしいことだろう。1審で全面有罪には驚いた。殺人や詐欺はともかく、窃盗に関しては「疑わしきは罰せず」が適用されてもいい事件もあったという記者たちの意見もあった。

  また、1審の判決が出た後に ・・・続きを読む
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筆者

杉浦由美子

杉浦由美子(すぎうら・ゆみこ) ノンフィクションライター

1970年生まれ。日本大学農獣医学部(現・生物資源科学部)卒業後、会社員や派遣社員などを経て、メタローグ社主催の「書評道場」に投稿していた文章が編集者の目にとまり、2005年から執筆活動を開始。『AERA』『婦人公論』『VOICE』『文藝春秋』などの総合誌でルポルタージュ記事を書き、『腐女子化する世界』『女子校力』『ママの世界はいつも戦争』など単著は現在12冊。

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