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拡大小さな黒板に思い思いのメッセージを書き、パレードする「東京レインボープライド」の参加者ら=5月7日、東京都渋谷区

10万人が集まった「東京レインボープライド」

 LGBTなどの性的少数者が差別や偏見にさらされず自分らしく生きていける社会の実現をめざす「東京レインボープライド2017」が、今年もゴールデンウィーク中に開催され、過去最高の約10万人を動員した。最終日の5月7日(日)に渋谷で開催されたパレードには約6000人が参加し、「性と生の多様性」を訴えた。

 その9日後の5月16日(火)には、日本経済団体連合会(経団連)が「ダイバーシティ・インクルージョン社会の実現に向けて」と題した提言を発表した。その中で、経団連は経済の持続的成長を実現するには、多様な人材の能力を引き出すことが不可欠であり、そのためにもLGBTへの企業の取り組みを進める必要があると指摘。各企業ができる具体的な取り組み例として、性的指向・性的自認等に基づくハラスメントや差別の禁止を社内規定等に明記すること、配偶者に適用される福利厚生を同性パートナーにも適用すること、性別を問わないトイレを設置すること、採用時の書類の性別欄を削除するなどを列挙した。

東京都による差別事件から四半世紀

 こうしたニュースに触れるたび、私は自分が大学生の時に傍聴に行った「府中青年の家」事件の裁判を思い出す。これは、1990年、宿泊施設の利用を申し込んだ同性愛者の団体に対し、施設を管理する東京都が同性愛者の団体のメンバーが同じ部屋に泊まることは「青少年の健全な育成に悪い影響を与える」として利用を拒絶した事件である。東京都は「男女別室ルール」を援用しただけだと主張したが、団体側が起こした損害賠償請求訴訟において、東京都は一審、二審ともに敗訴し、1997年、東京高裁において都の処分は「不合理な差別的取り扱いをしており違憲違法」であるとする判決が確定した。

 行政が同性愛者団体の施設利用を公然と拒絶し、そのことを正当化するという事件は当時、大きな社会的な議論を呼び起こしたが、事件から四半世紀が経ち、LGBTの人権状況は大きく改善したように見える。

 しかし、LGBTの人権を考える上で欠かせない問題でありながら、まだ社会的な注目が十分に当たっていない問題も存在している。それはLGBTの貧困問題である。

ホームレス化するLGBTの若者たち

 欧米のホームレス支援団体の間では、若年のホームレスの中にLGBTの若者の割合が高いことがよく知られている。イギリスでは若年ホームレスの4人に1人がLGBTであり、アメリカではその割合は約40%にのぼるという調査結果も存在している。そのため、LGBTのホームレスに特化した支援を実施しているNPOも少なくない。

 LGBTの若者がホームレス化しやすい理由としては、親が差別や偏見を持っているために親子間の関係が悪化し、その結果、実家から追い出されたり、家出をしたりする若者が多いこと、家庭や学校で自分のありのままを受け入れてもらえないために自己肯定感が損なわれ、メンタルヘルスの問題を抱える若者が多いことなどがあげられる。

 似たような状況は、日本国内にも存在していると考えられる。私自身、住まいを失った生活困窮者への相談・支援活動を行う中で、何人ものLGBTの人に出会ってきた。また、 ・・・ログインして読む
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筆者

稲葉剛

稲葉剛(いなば・つよし) 立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科特任准教授

一般社団法人つくろい東京ファンド代表理事。住まいの貧困に取り組むネットワーク世話人。生活保護問題対策全国会議幹事。 1969年広島県生まれ。1994年より路上生活者の支援活動に関わる。2001年、自立生活サポートセンター・もやいを設立。幅広い生活困窮者への相談・支援活動を展開し、2014年まで理事長を務める。2014年、つくろい東京ファンドを設立し、空き家を活用した低所得者への住宅支援事業に取り組む。著書に『貧困の現場から社会を変える』(堀之内出版)、『鵺の鳴く夜を正しく恐れるために』(エディマン/新宿書房)、『生活保護から考える』(岩波新書)等。

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