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先を読める久保建英がU-20W杯で国際デビュー

日本サッカー界に新時代のフットボーラ―の夢を描く15歳

増島みどり スポーツライター

 サッカーにおいてユース年代が活躍しない国で、代表が結果を出すのは困難だ。下のカテゴリーから国際大会、年代ごとのW杯など厳しい経験をした選手たちが、たどりついた代表で中心選手となる。こうした好循環が強豪国を支える欠かせない要素だとすれば、長く続いた日本のユース年代の不振は代表にも大きな影響を与えていたといえる。しかし今年、才能にあふれた選手たちの宝庫であるU-20がようやく、実に5大会ぶりにW杯に復帰を果たし、21日、韓国で1次リーグの初戦、南ア戦に臨んだ。

リエージュU21との試合でドリブルを仕掛ける久保建英(左から2人目)=2017年3月27日、ベルギー・リエージュリエージュU21との試合でドリブルを仕掛ける久保建英(左から2人目)=2017年3月27日、ベルギー・リエージュ
  注目を浴びるFW・久保建英(くぼ・たけふさ、FC東京)は、本来はさらに下の年代の代表でもあるが、今回は、18~20歳の選手に交じってただ1人、5つも年下ながら飛び級選出。しかし、15歳のレフティ(左利き)は流れを変える貴重なカードとして後半14分ピッチに立った。

  公式的な国際舞台は初戦となったが、久保は落ち着いていた。同点の局面で、早くも決勝点をアシストしデビューを飾る。現地で観戦する西野朗技術委員長は、「パスやドリブルといったワンプレーの精度はもちろんだが、展開の2つ、3つ先を見たプレーをしている。相手に囲まれていても、普通なら焦るところ、効果的なパスを狙うなど、いくつもの選択肢を持ってプレーしているのが素晴らしい」と、年齢とは関係のない冷静さや試合の展開を読み切る力を評価する。

  試合後、「(アシストの場面ではボールを受ける選手の)声が、『後ろ(にいる)』と聞こえていた。チームが結果を残すのが一番大事。自分の結果も残せて、気持ちよく次に進める」と話し、次戦、南米王者ウルグアイとの一戦(24日)に気持ちを向けた。15歳の堂々たるプレー、メディアへの受け答えは、彼の「育ち」による所が大きいのかもしれない。西野氏が称える「先を読むプレー」は、短いなかでも先を読んだコメントを選択する「リテラシー」にもつながっているようだ。

  川崎出身で2011年、10歳で、世界最高峰のクラブのひとつ、「FCバルセロナ」の下部組織「カンテラ」に合格。母と弟とバルセロナに住み、厳しい競争、徹底した育成プランを体にしみ込ませて日本に帰国している。これには一時、とつけるべきかもしれないが。単語を直訳すれば「石切り場」であるカンテラとはどんな場所か。久保のお陰で触れるチャンスが増えた重要なサッカー用語だ。

カンテラで徹底的に鍛える

  バルセロナFC、ライバルのレアルマドリードなどで注目される「カンテラ」とは、世界的な強豪クラブを支える若年層の下部組織を指す。バルセロナの場合は、寄宿舎だった建物の名称も含め「ラ・マシア」とも呼ばれる。

  「ラ・マシア」は、バルサにスカウトされた選手たちの寄宿寮であり(2011年6月に閉鎖し近代的な建物に)、ここからメッシ(アルゼンチン)、イニエスタ、シャビ(ともにスペイン)、またラ・マシアから選手、さらに監督へと上り詰めた先駆け、グアルディオラ(現・マンチェスターC監督)と、世界を代表するトップフットボーラ―たちが育った場所だ。内部は完全非公開とされる。

  久保が10歳から11歳で構成されるクラス「アレビンC」に所属した際は家族と市内で暮らしたが、世界中でもっとも贅沢、かつ手厚い下部組織には、トップチームと同じ、内科から整形外科までの医師、理学療法士、精神面のケアのためのカウンセラー、栄養士、シェフ、家庭教師が揃っており、バルセロナは、億単位の資金投入し子どもたちを育てている。

  「ただサッカーをするのではなく、バルサ哲学というものを理解しそれを体現させています。ボールを蹴り込んでシュート、といったサッカーをする子はいません。この年代からトップチームまでたったひとつのバルサフィロソフィーを貫くために、クラブが指導しているのです」

  日本にあるFCバルセロナの公認サポーター組織「ペーニャ」の山田晃広副会長は説明する。自身も、

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