杉浦由美子(すぎうら・ゆみこ) ノンフィクションライター
1970年生まれ。日本大学農獣医学部(現・生物資源科学部)卒業後、会社員や派遣社員などを経て、メタローグ社主催の「書評道場」に投稿していた文章が編集者の目にとまり、2005年から執筆活動を開始。『AERA』『婦人公論』『VOICE』『文藝春秋』などの総合誌でルポルタージュ記事を書き、『腐女子化する世界』『女子校力』『ママの世界はいつも戦争』など単著は現在12冊。
派手な小池の横に立つと、美人候補者が真面目で健気にみえるという構造
2回にわたって、都民ファーストの街頭演説会をレポートしている。都議選を控える中で、小池百合子は都議選立候補予定者と街頭演説をして回っているが、本稿では西東京市での演説をレポートする。
前回、小池百合子は登壇すると、片手に腰をあて、もう片方の手をまっすぐ挙げた。同時にウエストをクネっと曲げ、シナを作り、女らしい仕草をし、聴衆に手を振る。
そして、明るい笑顔で、優しく語りかけるような口調で演説をする。
それは私が政治記者や自民党関係者たちから聞く小池百合子像とは違う姿だった。小池百合子は「迫力がある」「貫禄がある」と聞いていたからだ。つまり、業界向けの顔と、聴衆向けの顔を変えているのだ。
これと対照的なのが参議院議員の片山さつきである。自民党関係者の女性たちが「片山さんのような強いイメージが女性政治家の理想像」だと表現していた。テレビカメラの前でも片山さつきは低い声で落ち着いた調子で話すが、演説になると、さらに声が低音で太くなり、強い口調でしゃべる。「俺についてこい!」という男前な雰囲気になる。つまり、従来の政治手法を貫く自民党の中では、女性は男性以上に男性らしく振る舞うことが良しとされる。
一方、演説の中でも「女性初の都知事」「都議会選の候補予定者の3分の1が女性」と小池は「女と政治」をアピールする。立候補予定者の桐山ひとみが西東京市議になった頃に「体操のおねえさんに何ができると言われた」というエピソードも小池が披露した。ようは、政治の世界で女はマイノリティだと主張し、聴衆に共感や支持を誘い込んでいるのだ。
1992年に参議院議員に初当選した時は、小池は国会に豹柄のミニスカートをはいて現れ、「女のセックスアピール」をして注目を浴びた。それが60歳を過ぎた現在は「マイノリティとしての女」を打ち出し、女性層を取り込もうとする。
しかし、この演説会のもうひとりの登壇者、立候補予定者の桐山は違う振る舞いをしていた。
桐山は三児の母でもあり、チラシを見るとそれを全面にピーアール材料にしているが、今回の演説では一切「三児の母として」「女性の声を政治の場に伝えたい」といった女アピールをしなかった。自分の経歴やキャリアを語るにしても、学生時代にオリンピックを目指し新体操に打ち込んできたことや18年間、西東京市で市議を務めてきたことを話すだけだ。
私は取材等で、都議や市議の女性に接したことが何度かあるが、彼女たちは基本的にごく普通の“素人の女性”である。「女性の候補者を出したいけれど誰かいないかな?」「あそこの奥さんは人前で話すことが得意だから向いていそう」という流れで担ぎ出されたというケースもしばしばある。
桐山のブログを見ると、GAPのバーゲンで子供の服を大量に買ったと、嬉しそうに戦利品の写真をアップしていたり、地元の公立中学の入学式に来賓ではなく、保護者として出席したりする様子が描かれている。ようは
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