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アクセント辞典改訂に見る「プロの日本語」の潮流

NHKが18年ぶりに発刊した「話し言葉の標準」の基準づくり

倉沢鉄也 日鉄総研研究主幹

 古き良き言葉、若者の流行語、アルファベット2~3文字での省略、業界用語‥‥。日本語にもさまざまなトレンドがあり、互いの良し悪しについて今昔永遠の議論が交わされる。義務教育課程(小・中学校)も文字での全国標準化はなされているが発音のアクセントまでを全国標準での指導はしていない。日本語には他の多くの外国語と異なり多少のアクセント違いでも会話が可能な言語のようだ。

  この点で、プロとして日本の標準たる発音アクセントを示す役割は実質的にテレビ・ラジオが担っていることになり、公共放送NHKがこれを長らくこだわって取り組んでいる。NHKのシンクタンクである放送文化研究所は、メディア・コンテンツビジネス・政策の研究とともに、アナウンサーや記者によって話される言葉の研究を大きな柱としており、幅広いテーマが月刊誌『放送研究と調査』に掲載されている。最新号以外はPDFでバックナンバーを閲覧可能である。

  その中でも同誌に11回連載という破格の長期特集となったのが、18年ぶりの改訂となった『NHK日本語発音アクセント新辞典』(NHK出版、2016年5月発刊)である。

「日本語発音アクセント辞典」を傍らに、原稿を読む練習をするキャスター=2016年3月17日、福井市のNHK福井放送局「日本語発音アクセント辞典」を傍らに、原稿を読む練習をするキャスター=2016年3月17日、福井市のNHK福井放送局
  1998年版は50刷18万部発行され、NHKほか放送局内外のアナウンサーのみならず、俳優・声優・ナレーター、イベントMC・司会業、朗読ボランティアやその指導者、日本語教育関係者、さらには学校の放送部まで幅広く活用されている、プロ必携と言うべき本である。

  この11回連載では改訂にあたっての表記ルールの変更や個別の言葉のアクセント変更などが学術的根拠とともに詳述されているが、最終回(2017年5月号)「SNSに見る『アクセント新辞典』への期待と要望」には、18年前には存在しなかったブログ及びSNS(Facebok及びTwitter)への書き込み、それも利用者であるプロ集団からの意見を特集しており、この辞典改訂の反響について多面的かつコンパクトに述べている。

  本稿では

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