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東京五輪の出遅れの挽回と猛暑対策とは

開催まであと3年となる24日は各地でイベント、猛暑は日本人有利といえない?

増島みどり スポーツライター

  24日、2020年東京オリンピック・パラリンピック開会式3年前を迎えにあたって、東京都、組織委員会はこの日、都庁で夜7時半からオリンピックの「フラッグツアー ~みんなのTokyo 2020 3 Years to Go!~」と題したイベントを開催する。スペシャル企画は、プロジェクションマッピングで、東京の景色や文化、町の魅力を伝えるものと、五輪招致の際に東京が世界にアピールした「スポーツの力」の2本立てになるそうだ。

東京五輪のエンブレムからパラリンピックのエンブレムに作り替えるカウントダウンイベント=2016年8月25日、東京都新宿区の東京都庁東京五輪のエンブレムからパラリンピックのエンブレムに作り替えるカウントダウンイベント=2016年8月25日、東京都新宿区の東京都庁
  イベントには、小池百合子都知事ら関係者が出席。夏休みに入っているため子どもたちの参加も多く見込まれている。東京のみならず、競技会場となる千葉、埼玉、福島、また北海道でも同日に五輪への機運を多いに盛り上げるフェスティバルが予定されるが、高まるのは機運だけではない。気温も同様だ。

  五輪開催が決定した13年9月以降も東京の気温は上昇しており、昨年までの10年間の最高気温平均は31.9度というデータもある。競技参加選手約10000人、加えて1000万人と見込まれるかつてない数の観光客が一極集中するのだ。3年前イベントは奇しくも、もっとも東京が暑い時期に、しかも高温多湿のピーク期間に行われる開会式、五輪・パラリンピックを「肌で感覚」で味わう夜にもなりそうだ。

観客にも熱中症のリスク

  14日、東京・赤羽にある国立スポーツ科学センター(JISS)で重要なセミナーが開催された。各競技団体の強化担当者、現場のコーチ約90人が参加し、酷暑のなか行われる五輪への「暑熱対策」が話し合われる初の場で、暑さへの順応、身体の冷却、水分補給の効果から20年の大会期間中の予想気温に至るまで幅広く内容は充実していた。

  一方では参加者から「暑さがどれほどのものか、聞けば聞くほど恐ろしくなる」といった声もあがる。特に屋外競技では、もっとも暑い日中の時間帯を避けても湿度に苦しむ。主に高校スポーツをのぞけば、この時期都心で2週間以上開催される大会はそもそもないのだから、サンプルもない。貴重なデータは数多く示されたが、やはり水分の補給と、体の冷却、疲労を蓄積しない、など原則は不動の掟だ。日本の科学を駆使したサポートシステムも今後詳細に組まれていく。

  「地元開催は有利だ、ホームタウンの利を活かす、と言われるが、この猛暑では日本人選手にも有利とは言えないのではないか。試合当日はもちろん、大会前のコンディション作りに相当な戦略を練り込む必要がある」
屋外競技の指導者はそう話す。

  真夏に行われた大会の少ない例に、1991年東京世界陸上がある。しかし8月の下旬からの期間中、35度を突破する猛暑日はなく、マラソンも朝のスタートで何とかしのげた。マラソン、さらに距離の長い50キロ競歩のために、東京都は道路に反射熱が上昇しない加工を施し、シャワーミストを整備するなど工事を行う。夏の暑い時期に、暑い場所で五輪が開催されるようになったのは、一般的に1984年のロサンゼルス五輪からとされる。

  当時、暑さ対策に暑さの中でトレーニングし、結果的には疲労困憊でレース臨んだ日本陸上連盟の瀬古利彦・マラソンプロジェクトリーダーは「私の時代の失敗も含め、シューズ、ユニホーム、給水、キャップといったギアの開発も含めて、日本には暑さの中でメダルを狙ってきたノウハウはある。その集大成ともいえる五輪にしたい」と、悪条件を利に変えたいとする。

  1000万人を超えると予想される観光客への対応も簡単ではない。過去の五輪でも

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