学校での支援なく“放置状態”、1年経過して日本語わからない事態も
2017年08月15日
2016年末の時点で、日本国内に暮らしている外国人は238万を超えました。ここ数年、特にその増加は著しく、生活の中で外国人を見かけることも増えてきたのではないでしょうか。この238万人の外国人の中には、赤ちゃんから高齢者まで含まれていますが、このうち、日本の公立学校に通う子どもがどのくらいいるか、どのように日本語を学び、日本の学校で勉強しているか、その実態をご存じでしょうか。
2017年6月、文部科学省はある調査結果を公開しました。日本の公立小、中、高校、特別支援学校等に在籍していながら、日本語の力が不十分な、「日本語指導が必要な児童生徒」の受け入れ状況を調べたもので、2002年から2008年までは毎年、それ以降は隔年で公表されています。
この調査結果によると、公立学校に在籍する「外国籍」の生徒は80,119人。そのうち、日本語指導が必要な状況(つまり、日本語ができず、学校生活や勉強についていけない)にある外国人児童生徒は34,335人でした。また、日本国籍を持っているものの、「ハーフ」「ダブル」など日本語を母語としない子どもで、日本語指導が必要な児童生徒は9,612人。併せて43,000人以上という数は、10年前の1.6倍です。
日本の学校に在籍してはいるものの、日本語の壁に苦しんでいる子どもたちが日本国籍・外国籍に関わらず、全国にどのくらいいるのかを把握することは困難で、その実態の全てをつかむことは難しいのが現状です。外国人が多く暮らす自治体単独の調査や、研究者が研究対象としている地域に限った調査などは散見されるものの、全国レベルの状況は、この「日本語指導が必要な児童生徒の受入状況等に関する調査」が唯一の手がかりとなっています。
一方、前回までのこの調査結果からは「どのくらい日本語指導が必要な児童生徒がいるのか」という量的な実態しか把握する事ができず、どのように日本語指導が必要であるかを判断しているのか、どのような指導を行っているのかといった、内容面での実態は公表されていませんでした。つまり、この調査結果を持って、日本語を母語としない子どもたちの日本語教育環境改善への糸口を見いだすことはできなかったのです。
しかし、今年度新たに公表された調査結果では、前述の質的側面に注目した調査結果が公開され、学校内における「日本語指導」のより具体的な実態が明らかとなった点で注目に値するものとなりました。
筆者が特に注目したのは、「日本語指導が必要な児童生徒」がどのように「日本語指導が必要である」と判断されているかを表した項目です。
調査結果によれば、最も多かった“判断基準”は、「児童生徒の学校生活や学習の様子」(8064校)でした。次いで、「児童生徒の来日してからの期間」が2,982校。一方、文部科学省が、日本語を母語としない子どもたちの日本語力の測定のために開発した「外国人児童生徒のためのJSL対話型アセスメント DLA:Dialogic Language Assessment」をはじめとする、何らかの日本語能力測定方法に従って判断している学校数は、わずか1,751校であり、日本語指導を必要とする外国籍の子どもが在籍する学校の4分の1に留まることが明らかとなりました。
日本語を母語としない子どもたちの日本語指導の必要性が、時に極めて属人的な判断によって左右されている可能性については、こうした子どもたちを支える支援者の間では以前からよく言及されてきたところでしたが、その実態が、調査の結果により裏づけされることとなりました。
判断の基準として最も多かった「児童生徒の学校生活や学習の様子」では、例えば、来日直後日本語がまったくわからなかった子どもが、ある程度学校生活のパターンを理解し、教室移動や体育着への着替えができるようになったり、生徒同士がカタコトの英語などを介してコミュニケーションが図れているなどの場合に「日本語はほとんどわかっていないようだが、それなりに“適応”しているので大丈夫である」とされ、この調査の対象とはならないケースもあります。
また、
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