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「2割の自治体で書店消滅」への対応を考える

本を“浴びる”状況をつくらないと購買に結びつかない

倉沢鉄也 日鉄総研研究主幹

閉店後の書店の様子。返本するため棚にあった本は段ボールに詰められる=2015年10月22日、大阪市淀川区、青木信明さん提供閉店後の書店の様子。返本するため棚にあった本は段ボールに詰められる=2015年10月22日、大阪市淀川区、青木信明さん提供
 出版取次大手によると、香川県を除く全国46都道府県、420の自治体・行政区で、すでに書店が1店舗もないという。「無書店自治体」は全自治体約1900の2割強を占め、別の調査ではこの4年間で1割増えたという(朝日新聞2017.8.24)。地域経済論、文化保護論、ネットメディア論、など様々な論評がすでに展開されている。

  本を買うのにネット通販があれば十分という声は、書籍流通市場の全体像を見誤っている。アマゾンは現在、国内書籍流通市場の1割と言われている(業績非公開)“日本最大の書店”だが、逆に言えば残りの8割以上はリアル書店での売上高だ。

  すでに書籍市場の1割を占める電子書籍は事実上マンガでしか市場形成できておらず、そもそも若者はネットニュースやSNSの文字を読むのに時間を費やし過ぎて電子書籍など読んでいない。学生が勉強目的で参考書や問題集を渋々書店で買い求めるのみだ。

  そして本というものはどう買われるかというと、タイトルまで指定した本を取り寄せて買うという行動は、アマゾンの市場規模のとおり2017年でもマイノリティーだ。

  圧倒的多数の本の購買は、本屋にふらっと出かけて、棚と平積みとPOP広告を“浴びて”実物の本に様々目移りして、立ち読みしたりして、絞り込みつつも2、3冊買ってしまう、という行動によって実現しているのが20世紀と大きく変わらない現状である。アマゾンのおすすめもレビューも、電子書籍の立ち読み機能も、このあやふやな“本を浴びる”行動を代替することはできていない。

 逆に、買いたい本を特定できてしまえば

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