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「小商い」で元気づく出版社、書店、雑誌

活字不況といわれるなか、規模を求めず個性でファンをつかむ

川本裕司 朝日新聞記者

 書店が減るなか、小規模でも特色のある本を売り出す「小商い」で、活路を見いだそうとする人たちがいる。小さな書店、1人で切り盛りする出版社――。それぞれの循環も生まれている。

 東京都杉並区。JR中央線の荻窪駅から歩いて十数分のところにある書店「Title」は、辻山良雄さん(44)と妻が2016年1月に開いた。みすず書房や筑摩書房、白水社、平凡社などの人文書が書棚に目立ち、ビジネス書や自己啓発本は見当たらない。

   辻山さんは以前、大手書店リブロの池袋本店で勤務。15年に同店が閉店したのを機に独立し、約70平方メートルの店舗で個人編集の雑誌を積極的にそろえる。開店以来、単行本では2番目に売れている若松英輔さんの「悲しみの秘儀」の版元・ナナロク社(東京都品川区)は社員2人の小出版社。辻山さんが目をとめて発注したり「置かせてほしい」と申し出があったり。少部数雑誌や地方出版社の本が1割を占める。

  出版社「タバブックス」(東京都世田谷区)もそのうちの1社。宮川真紀さん(55)が5年前に起業し、実質1人で切り盛りする「ひとり出版社」だ。

  宮川さんは「大部数を目指さなくていいので、新しい著者や価値観の本を出せる」。年2回出す雑誌「仕事文脈」やエッセー「バイトやめる学校」などを刊行。子育ての葛藤を抱えながら夫以外の男性にも心揺れる日々がつづられた日記本「かなわない」は16年2月の刊行

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