倉沢鉄也(くらさわ・てつや) 日鉄総研研究主幹
1969年生まれ。東大法学部卒。(株)電通総研、(株)日本総合研究所を経て2014年4月より現職。専門はメディアビジネス、自動車交通のIT化。ライフスタイルの変化などが政策やビジネスに与える影響について幅広く調査研究、提言を行う。著書に『ITSビジネスの処方箋』『ITSビジネスの未来地図』など。
旧来の材料、手法で再現を目ざす熊本城と名古屋城の建築費は割高が必至
先日、ある建設関係者から、日本の「お城の天守閣」の多くが建て替え時期にある、と聞かされた。
なるほど、国宝として何百年も残ってきたいくつかの城は別にして、名古屋城や大阪城を代表として多くの城の天守閣や周辺建築物が戦災で焼失、コンクリートで再建され、そのことが戦後復興シンボルともなっていた。1955(昭和30)年頃完成したとして、築60年以上。もはや建て替え時期だ。全国にそういうコンクリート製の城郭が100弱あるという。
たしかに筆者が入ったことのある名古屋城天守閣や大阪城天守閣という観光ビルは、もはや時代遅れというべき不便さだ。それは、これも筆者が入ったことのある国宝・松本城天守閣の不便さとはまったく性質が異なる。
折しもコンクリート製の熊本城天守閣が被災し、土瓦が崩落した。どうも熊本市は「市民感情の優先」と説明し、建設当時と同じ材料、同じ手法で再現・復旧する模様だ。防災のためのコストは、材料の軽量化や先端的な工法を最大限用いるよりも、旧来の再現のほうが、トータルに割高になるのは明らかだ。それは観光資源として、市民のシンボルとして、税金や入場料の使い道として欠かせない活動なのか、正直言って疑問だ。
名古屋城の建て替えにあたり、河村たかし名古屋市長は400年前そのままの再現を目指すという。材木、漆喰、土瓦
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