杉浦由美子(すぎうら・ゆみこ) ノンフィクションライター
1970年生まれ。日本大学農獣医学部(現・生物資源科学部)卒業後、会社員や派遣社員などを経て、メタローグ社主催の「書評道場」に投稿していた文章が編集者の目にとまり、2005年から執筆活動を開始。『AERA』『婦人公論』『VOICE』『文藝春秋』などの総合誌でルポルタージュ記事を書き、『腐女子化する世界』『女子校力』『ママの世界はいつも戦争』など単著は現在12冊。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
中卒でも「東大卒」の肩書が得られるのはなぜ?
研究者出身の政治家がかつてバラエティ番組で、「自分が学生だったころは、東大法学部で最も優秀な学生たちは院に進んで研究者になり、次の階層が司法試験を受け、その下が官僚になった」という趣旨を話したと記憶する。
確かに1990年前後ぐらいまではそういう風潮だったようだ。当時の東大は、法学部以外の文系学部も、院に進むのはハードルが高かった。その頃、東大の文学部に在籍していた大学教授がいう。
「大学院入試に落ちた学生が泣く泣く総合商社や大手出版社、都市銀行に就職していた」
現在そうそうたる地位にいる研究者(大学教授)たちの中には院に入るために浪人している人もいる。それぐらい、当時、東大・文系の大学院は難関だった。
しかし、1990年代半ばぐらいになると、院に受かっても、進学せず民間企業に就職する学生が出てきた。そして、現在は「民間企業に就職できなかった子が院に進む」(20代東大法学部出身大手企業勤務のコメント)となっている。
データをみてみよう。2017年の春の入試で、東大の大学院修士課程、法学政治学の総合法政専攻(ロースクールではない専攻)は定員が20人で入学者は11人。そのうち東大の学部からの進学者は4人だ。また、人文社会系の修士課程は定員が193人で入学者は128人である。難関国立大学の教授も「今、文系の院はどこも入るのが簡単だ」と話している。定員が増えたというだけではなく、入ってくる学生の質にも首をかしげる
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