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時代劇全盛時代の京都の撮影所が醸し出した風情

生田斗真が美味しいと唸った太秦の冷やしカレーうどんを生んだ喫茶店は東映撮影所の前

薄雲鈴代 ライター

 夕方6時のニュース番組の視聴率は、その前に放映される時代劇の再放送に命運がかかっているという。時代劇を見ていた視聴者が、そのままニュースに流れ込むからである。再放送といえども、人気の高い時代劇を抱えているテレビ局は強い。

  しかしながら、京都の撮影所で時代劇が作られる機会が減って久しい。かの長寿番組『水戸黄門』シリーズがいよいよ終わるという2011年のときも、「時代劇は膨大な製作費が嵩むから致し方ない」と現場で聞いたが、「これで時代劇のノウハウを知るスタッフや役者が途絶えるのが心配」と危惧する声も方々で伺った。着物の着付けひとつ習得するのにも、毎日ちょっとでも袖を通して練習しなければいけないように、時代劇の所作は一朝一夕では身につかない。

  活躍の場こそ断然減ったが、時代劇の黄金期といわれた頃から粛々と役者を続けている映画人が京都の撮影所にはいまだ健在だ。

  片岡千恵蔵の付き人からはじまって役者人生一筋の小峰隆司さんもその一人。「気がつけば、最年長になっていましたね」という小峰さんは、撮影所に通いつづけ「役付き」であっても「仕出し(エキストラ)」であっても、依頼された役はなんでもこなす。84歳の年男にして、なお意気揚々。日々鍛錬しているゆえに矍鑠(かくしゃく)としている。

  撮影所の食堂で小峰さんに話を伺っていたとき、ちょうど藤沢周平原作・溝端淳平主演の『立花登青春手控え』(BS時代劇)の撮影中であった。

  「時代劇の撮影現場もここ数年で変わりましたよ。すごくスピーディーに、無駄なくさっさと撮影進行されていきますけれどね……」と小峰さんは言葉を含む。

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筆者

薄雲鈴代

薄雲鈴代(うすぐも・すずよ) ライター

京都府生まれ。立命館大学在学中から「文珍のアクセス塾」(毎日放送)などに出演、映画雑誌「浪漫工房」のライターとして三船敏郎、勝新太郎、津川雅彦らに取材し執筆。京都在住で日本文化、京の歳時記についての記事多数。京都外国語専門学校で「京都学」を教える。著書に『歩いて検定京都学』『姫君たちの京都案内-『源氏物語』と恋の舞台』『ゆかりの地をたずねて 新撰組 旅のハンドブック』。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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