杉浦由美子(すぎうら・ゆみこ) ノンフィクションライター
1970年生まれ。日本大学農獣医学部(現・生物資源科学部)卒業後、会社員や派遣社員などを経て、メタローグ社主催の「書評道場」に投稿していた文章が編集者の目にとまり、2005年から執筆活動を開始。『AERA』『婦人公論』『VOICE』『文藝春秋』などの総合誌でルポルタージュ記事を書き、『腐女子化する世界』『女子校力』『ママの世界はいつも戦争』など単著は現在12冊。
「若者層は保守的」論の勘違いと空虚さが日本をダメにする
「若者の保守化」をメディアが取り上げるようになって久しい。数カ月前に、報道番組『サンデーモーニング』で司会者の関口宏は、上の世代に比べて若者層の政権率が高いというデータを見て、「若者は安定を望まず変化を求めるべき」という趣旨をコメントし、注目された。今月に入っても「毎日新聞」が10月9日に『〈衆院選〉若者層は保守的? 内閣・自民党支持多く 世論調査』という記事を配信し、Yahooトピックスに取り上げられた。
この毎日新聞の記事では、同新聞が今年9月に実施した全国電話世論調査の結果を載せている。全体として20代以下と30代は、上の世代に比べ、内閣支持率も自民党支持率も高いとのことだ。記事の中では、埼玉大社会調査研究センター長の松本正生の「他の各種世論調査でも10代を含む若い世代で内閣や自民党の支持率が高い傾向があり、男性が女性よりも高い」という話を載せている。
これらの世論調査結果を踏まえ、現在、「若者の保守化」を憂う言説がテレビや新聞などではよく見受けられる。
しかし、この「自民党支持・内閣支持=若者の保守化」という図式は本当なのだろうか。
『中央公論』2017年10月号で、読売新聞・早稲田大学共同世論調査のデータを元に、高知大学講師の遠藤晶久、武蔵野大学准教授の三村憲弘、武蔵野大学講師の山﨑新という30代の政治学者たちが『維新は「リベラル」、共産は「保守」 世論調査にみる世代間断絶』という論考を書いている。
この世論調査によると、70代以上が保守とみなす政党の順番は、自民党、日本維新の会、公明党、民進党、共産党となる。記事の中では「伝統的な政党間対立の見方と整合的であろう」と評している。私も、自民や維新は保守で、最もリベラルなのは共産だというのが一般的な認識だと考えていた。
ところが、18歳から29歳の若者はまったく違う回答をしている。彼らが保守だと思う政党の順は、公明、無党派層、共産、民進、自民、維新なのだ。若者層は維新こそ最もリベラルな政党ととらえており、共産は自民よりも保守だと見ている。
この「維新がリベラルで、共産党は保守」とみなす傾向は
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