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初の高裁による原発稼働差止め決定の分析(上)

阿蘇カルデラの噴火の可能性を認めた意義は大、国際的基準より劣る日本の規制要求

瀬木比呂志 明治大法科大学院教授

伊方原発3号機に運転差し止めの仮処分が出され、幕を掲げる弁護士ら=2017年12月13日、広島市中区拡大伊方原発3号機に運転差し止めの仮処分が出され、幕を掲げる弁護士ら=2017年12月13日、広島市中区
  広島高裁(野々上友之裁判長)が、2017年12月13日、広島地裁の仮処分却下決定に対する債権者ら(住民ら。通常の民事訴訟でいえば原告らに当たる)の即時抗告を容れ、伊方原発3号機の運転を2018年9月30日まで禁じる仮処分命令を発した。

  初の高裁による原発稼働差止め仮処分、判断であり、この点で、社会やほかの原発訴訟に与える影響が大きいと思われる。

  もっとも、判断の内容をみると、かなりの問題をも含んでおり、手放しで全体を評価できるようなものではない。その意味では、いわば、「諸刃の剣の決定」といってよいだろう。そして、ことに、配布された(インターネットでも閲覧できる)「決定要旨」の書き方からみると、かなりの混乱も感じられ、各論点について裁判体の内部で議論が分かれた可能性もうかがわれるところだ(もちろん、この点は、長年の裁判官経験のある私の、経験に基づく推測の域を出ないが)。

  以下、裁判所がその判断をみずから要約したものであり、その意味で要約として信頼性が高いといえる「決定要旨」(これが担当裁判官(ら)によって作成されることは、周知の事実だ)の文言を中心的に引きながら、順次分析してゆきたい。

 まず、「火山事象の影響による危険性について、伊方原発が新規制基準に適合するとした原子力規制委員会の判断は不合理であり、抗告人らの生命身体に対する具体的危険の存在が事実上推定されるから、抗告人らの申立ては、被保全権利の立証(疎明)がなされたといえる。伊方原発は、現在稼働中であるから、差止めの必要性(保全の必要性)も認められる」としている点は、伊方原発から約130キロメートルの距離にある阿蘇カルデラの噴火による危険性を認めたものであり、その意義は大きい。被保全権利と保全の必要性を認めた点も、後記のとおり差止めに異例の期限を付けている点を除けば、適切である。

 この決定の評価すべき部分が以上に尽きるのは、審理の経過からして判断に対する期待が大きかっただけに、いささか残念だ。

  だが、原発訴訟のような、裁判官に大きな負荷のかかっている、「統治と支配」の根幹にふれる裁判 ・・・ログインして読む
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筆者

瀬木比呂志

瀬木比呂志(せぎ・ひろし) 明治大法科大学院教授

1954年名古屋市生まれ。東京大学法学部在学中に司法試験に合格。裁判官として東京地裁、最高裁などに勤務、アメリカ留学。並行して研究、執筆や学会報告を行う。2012年から現職。専攻は民事訴訟法。著書に『絶望の裁判所』『リベラルアーツの学び方』『民事訴訟の本質と諸相』など多数。15年、著書『ニッポンの裁判』で第2回城山三郎賞を受賞。

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