会計検査院が突いた根本的疑問、3度の交渉から見えてきた財務省の「弱み」
2018年01月10日
大阪府豊中市の閑静な住宅街にある一軒家に、「籠池」という白い表札がかかる。
2017年の師走に訪ねると、あたりは静まりかえっていた。学校法人森友学園への国有地売却が発覚した昨春以後、玄関前には連日のように報道機関が張り込み、籠池泰典被告=前理事長=と妻の諄子被告の「出待ち」をした。2人は7月に大阪地検に詐欺容疑で逮捕され、異例の長期間にわたり勾留されている。
主のいない家の付近は、かつての騒動がうそのようだ。
12月20日、民事再生手続き中の森友学園の債権者集会が、大阪地裁であった。学園が抱える負債は約30億円。負債の97%の免除を求めた再生計画案は過半数の同意で可決された。前理事長の長女の町浪(ちなみ)・理事長は、管財人と並んで記者会見し、学園の塚本幼稚園を経営しながら負債を返していく決意を語った。
債権者への感謝を述べた町浪氏は、時おり声をふるわせ、懇願するような表情を見せた。
再生への道は険しい。
自宅は小学校を建設した業者に仮差し押さえされ、財源としてどこまで期待できるかわからない。幼稚園の現在の園児は65人だが、今春の入園予定は10人弱にとどまる。
会見後、町浪氏はJR大阪駅前で園児募集のビラを配った。がんばっている、という意思表示でもあろう。
先行きはまったく見通せない状況だ。
■
年が明け、森友問題は過去の話になるか。否、である。過去のものにしてはいけない。
昨年3月の国会での証人喚問で、籠池泰典被告は国有地の売買交渉の進展について「神風が吹いた」と語った。その風の正体はなんだったのか。
これまでに明らかになった関係者の証言や国会答弁、音声データなどから整理してみる。
ことの本質は、安倍首相の妻昭恵氏が小学校の名誉校長に就任した15年9月から、国有地売却が決まった16年6月までの1年弱にあった3回の国と学園との交渉に集約される。
一つは16年3月15日、田村嘉啓・財務省国有財産審理室長(当時)が、籠池被告と会った財務省内でのやりとりだ。4日前、籠池被告から近畿財務局に「新たなごみが見つかった」と連絡がきていた。
録音データによると、籠池被告は田村室長に「話をつけに行かなあかんことがありましたもんですから、飛び込んできました」と切り出す。室長は「報告は受けています」と答え、土地を定期借地契約で貸すことが、国として特別扱いであることを説明した。
実は前年9月
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