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森友問題で財務省は誰も処分しないのか

会計検査院が突いた根本的疑問、3度の交渉から見えてきた財務省の「弱み」

前田史郎 朝日新聞論説委員

  大阪府豊中市の閑静な住宅街にある一軒家に、「籠池」という白い表札がかかる。

  2017年の師走に訪ねると、あたりは静まりかえっていた。学校法人森友学園への国有地売却が発覚した昨春以後、玄関前には連日のように報道機関が張り込み、籠池泰典被告=前理事長=と妻の諄子被告の「出待ち」をした。2人は7月に大阪地検に詐欺容疑で逮捕され、異例の長期間にわたり勾留されている。

  主のいない家の付近は、かつての騒動がうそのようだ。

  12月20日、民事再生手続き中の森友学園の債権者集会が、大阪地裁であった。学園が抱える負債は約30億円。負債の97%の免除を求めた再生計画案は過半数の同意で可決された。前理事長の長女の町浪(ちなみ)・理事長は、管財人と並んで記者会見し、学園の塚本幼稚園を経営しながら負債を返していく決意を語った。

衆院予算委で「金額のやり取りが一切なかったかのように答弁が受け止められ誤解を招いたとすれば、おわび申し上げる」と述べた財務省の太田充理財局長=2017年11月28日衆院予算委で「金額のやり取りが一切なかったかのように答弁が受け止められ誤解を招いたとすれば、おわび申し上げる」と述べた財務省の太田充理財局長=2017年11月28日
  豊中市の国有地と小学校舎は、第三者に一括転売するよう国に働きかけていくという。
前理事長の経営責任を問う損害賠償額について、同地裁は計10億3000万円と決定した。管財人は、自宅を強制競売にかける方針を明らかにした。

  債権者への感謝を述べた町浪氏は、時おり声をふるわせ、懇願するような表情を見せた。

  再生への道は険しい。

  自宅は小学校を建設した業者に仮差し押さえされ、財源としてどこまで期待できるかわからない。幼稚園の現在の園児は65人だが、今春の入園予定は10人弱にとどまる。

  会見後、町浪氏はJR大阪駅前で園児募集のビラを配った。がんばっている、という意思表示でもあろう。

  先行きはまったく見通せない状況だ。
          ■

 年が明け、森友問題は過去の話になるか。否、である。過去のものにしてはいけない。
昨年3月の国会での証人喚問で、籠池泰典被告は国有地の売買交渉の進展について「神風が吹いた」と語った。その風の正体はなんだったのか。

  これまでに明らかになった関係者の証言や国会答弁、音声データなどから整理してみる。

  ことの本質は、安倍首相の妻昭恵氏が小学校の名誉校長に就任した15年9月から、国有地売却が決まった16年6月までの1年弱にあった3回の国と学園との交渉に集約される。

  一つは16年3月15日、田村嘉啓・財務省国有財産審理室長(当時)が、籠池被告と会った財務省内でのやりとりだ。4日前、籠池被告から近畿財務局に「新たなごみが見つかった」と連絡がきていた。

  録音データによると、籠池被告は田村室長に「話をつけに行かなあかんことがありましたもんですから、飛び込んできました」と切り出す。室長は「報告は受けています」と答え、土地を定期借地契約で貸すことが、国として特別扱いであることを説明した。

  実は前年9月

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