田中敏恵(たなか・としえ) 文筆家
1969年生まれ。文芸誌編集を経てフリーランスに。文芸、食、旅、建築などライフスタイル分野の記事や、国内外で活躍する著名人たちへのインタビューを雑誌や新聞に寄稿。2006年より取材を開始したブータン王国に関する講演活動も行う。著書に『ブータン王室はなぜこんなに愛されるのか~心の中に龍を育てる王国のすべて』、共著に『未踏 あら輝~日本一予約の取れない鮨屋』。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
ファストファッショやSNSが影響力を強めるなか、口コミで評価されたパーティとは
カジュアル化が著しいファッションの世界で、ラグジュアリーブランドの生き残りは至上命題のひとつといっていい。今、最も注目されているグッチのデザイナー、アレッサンドロ・ミケーレは雑誌のインタビューで「ファッションは瀕死の状態ならば死なせてあげればいい」という刺激的なメッセージをおくっている。
00年代あれほど盛り上がっていたブランドファッション界に陰りが見えるのは、カジュアル化だけが問題ではないだろう。ファストファッションやSNSの成熟により、何もラグジュアリーブランドやモード誌を参考にしなくても、“トレンド”を知り身に付けることは容易である。
いや、本家以上に早いスピードで手に入れられる。また世界戦略の一環として、ブランドはどの国にいても同じショーウィンドウに飾られたスタイルが打ち出されるようになって久しい。これによって、ブランドが提案したいファッションが徹底されるわけだが、その土地の個性は希薄になる。
コピペともいえるビジュアルイメージ、SNSなどによりインターネット上でおおよその情報を手に入れられる状況は、ファッションをどんどん記号化させている。商品のデザインやクオリティ以外にも、高価な店のしつらえや教育された店員など、ラグジュアリーブランドがラグジュアリーであるしかるべき理由は、もしかしたらどんどん役割がなくなっていっているのかもしれない
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