杉浦由美子(すぎうら・ゆみこ) ノンフィクションライター
1970年生まれ。日本大学農獣医学部(現・生物資源科学部)卒業後、会社員や派遣社員などを経て、メタローグ社主催の「書評道場」に投稿していた文章が編集者の目にとまり、2005年から執筆活動を開始。『AERA』『婦人公論』『VOICE』『文藝春秋』などの総合誌でルポルタージュ記事を書き、『腐女子化する世界』『女子校力』『ママの世界はいつも戦争』など単著は現在12冊。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
「お金儲けは下品だ」という思考が、家庭の資産を減らしていく
ゼロ金利時代となって久しく、誰しもが「貯金しても金利がつかない」ことを嘆いている。
その中で家庭の主婦たちの間で優待株ブームが起きている。優待株とは、株主優待が充実している人気の株を指す。
金券ショップに行くと、電鉄会社の優待乗車券が売られて、この券があれば全線に乗車することができる。この株主優待はどんどん多様化している。
外食産業は食事券、スーパーは値引き券、百貨店は10%引きになるカードなどを配布する。また、自社の商品の食品や化粧品を配る企業もある。JT(日本たばこ産業)も自社商品の飲料や食品を優待にしている。
このようなお得感は主婦の心を掴むようで、女性週刊誌や生活情報誌、女性向けネットサイト等々でもしばしば株主優待の特集を組む。
しかし、取材をしていくと、これらの優待株ブームもリスクを伴うものだということが分かってくる。
「株式投資入門の本を読むと、“欲を出すと損をする”と書いてあります。一攫千金を得られるのは新興株です。それらの株は株価が急上昇することがあるからです。一方で、急落することもしばしば。リスクが大きいので、初心者は手を出すなということです。しかし、優待株に関しては、主婦に欲がないから損をすることが多いんです」(ファイナンシャルプランナー)
現在の優待株ブームについて大手証券会社の社員はこう話す。
「日本人はお金儲けは汚い、下品だという感覚がいまだに根強いですよね。特に主婦の方々は夫の稼ぎである程度生活を保障されているから、『お金儲けなんて下品』と考えられるのでしょうか。そういう彼女たちは株式投資で資産を増やすのは“金儲け”感があるから抵抗があるけれど、“優待がもらえる”というお得感目当てなら株を買えるんです」
優待の内容が充実した銘柄は、優待目当ての人たちが持ち続け、基本的に株を売らないので、株価が動かない。この安定感も優待株の魅力だとされている。
しかし、優待株も下落のリスクはある。そのリスクをちゃんと考えて優待株を保有しているのだろうかと心配する見方も出てくる。
「3月中旬になると、3月末に権利が確定する優待株を”今から買えば間に合う”と煽るネットニュースサイトの記事がたくさん出てきます。でも、権利確定の月は優待株の価格が最も高い時期ですから、直前に買うのはリスクが伴います。優待株を買うなら、過去のデータを調べて、値が下がる時を狙うべきなのに」(先出のファイナンシャルプランナー)
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