財務事務次官のセクハラ問題に女性記者として思うこと
2018年04月24日
それは遠い昔、25年も前のことです。記者になって6年、東京本社の社会部で仕事をしていたときのことです。取材関係のある立食形式のパーティーで、財務省の前身の大蔵省の官僚の方々数人と一緒になりました。名刺を交換して、確かビールかワインを片手にお話をしました。
その中のひとりの方が、このあと食事でもしてホテルにでも行かないか、というような趣旨のことを言ってこられました。ずいぶん昔のことなので、もはや具体的な言葉は覚えていませんが、不快感だけはいまもはっきりと覚えています。「この人は超エリートだろうが、言い寄れば、女はだれでもホテルについていくと思っているのだろうか」と感じたことはいまも忘れません。その後、その人から一度電話がかかってきましたが、やんわりとお断りしました。
もしや同一人物か、と思い、慌てて昔の名刺帳を繰ったところ、当時、課長補佐だった方の名刺が出てきました。違う名前の方でした。官僚のすべてがそうだとは思いませんが、あのときの女性を見下した態度は、今回の福田さんと共通のものがあるのではないかと思いました。
このときは、私自身はこの課長補佐に取材するつもりはなく、何のためらいもなく、お断りしましたが、正直なところ、今回のテレビ朝日の女性社員のようにネタをとる重要な相手だったら、食事ぐらいは応じたかもしれません。
私が記者になったころは、女性記者は極めて珍しく、「セクハラ」という言葉もない時代でした。取材相手とは親しくなってネタを取ることが重要だと言われ、私はそれが至上命令のように思っていました。
入社して赴任した県では、すぐに警察回りをしました。警察回りでは幹部の取材は欠かせません。ある警察幹部は、取材に行くと、なにやらいやらしい言葉をかけてきたり、手を握ってきたりしました。最初は大事なネタ元だからと我慢していましたが、あるとき、幹部の部屋に入ると、抱きつかれ、キスされそうになりました。未熟な私は顔を背け、やさしく押し返すことしかできず、その場では抗議できませんでした。この幹部は取材先としては非常に重要でした。また、時々ネタをくれる人でもありました。
しかし、私はこの一件から、この幹部のところには行くまいと心に決めました。
ところが、
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