メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

RSS

月9『コンフィデンスマンJP』はなぜ微妙(上)

脚本は『リーガル・ハイ』の古沢良太 フジが気合を入れた企画が盛り上がりに欠ける訳

杉浦由美子 ノンフィクションライター

フジテレビのドラマ「コンフィデンスマンJP」に主演している長澤まさみさん=2018年3月26日、東京都江東区拡大フジテレビのドラマ「コンフィデンスマンJP」に主演している長澤まさみさん=2018年3月26日、東京都江東区
 フジテレビの月曜日9時から放送ドラマ「月9」の不振についてたびたびこの欄で言及してきた。かつては『ロングバケーション』『ガリレオ』等々の平均視聴率20%越えのヒット作を数多く放送してきた枠だが、近年視聴率が不振で、前クールの『海月姫』は平均視聴率が6.1%、第7回分は4.9%という低い数字を記録した。

 この危機的な状況を打破するために、今クール、フジテレビは気合の入った企画をぶつけてきた。主演は人気女優の長澤まさみ、脚本は『リーガル・ハイ』(フジテレビ系)等のヒット作を手がけた人気シナリオライター古沢良太だ。長澤らが演じる詐欺師集団が悪徳資産家から金をだまし取る繰り広げる痛快コメディである。

 しかし1回目の視聴率は9.4%、2回目は7.7%、3回目は9.1%と二桁に届かない。他の連続ドラマでは初回視聴率が二桁のものがいくつもあるのに、だ。『コンフィデンスマンJP』の初回放送分は豪華なセットや衣装で華やかだった。なのに、なぜ、視聴率が振るわないのか。今回もコミックやドラマなどのフィクションコンテンツの制作現場にいる面々に話を聞いてみよう。

主人公が犯罪をするのには理由が必要

 「主人公が犯罪者という設定の場合、刑法を犯す理由が必要なんです。そうしないと視聴者が共感できないからです。詐欺を扱ったドラマでは『クロサギ』(TBS系)というヒット作がありますが、主人公は詐欺師に騙され、家族心中した生き残りで、復讐のために詐欺被害者救済を違法な方法でやっています。また、名作映画『スティング』(アメリカ・1974年公開)では、ギャングに仲間が殺され、その報復のために、大がかりな詐欺を企てます。ところが『コンフィデンスマンJP』ではそれが提示されないでしょう」(中堅出版社コミック編集者)

 月9枠で放映された『民衆の敵』で、平凡な主婦が「市会議員ってお金が沢山もらえるんだって」というだけの理由で、選挙に立候補してしまったのと似た構造だ。主人公が行動を起こす理由が提示されないと、視聴者は主人公の行動が理解できずに、物語に入っていけない。

 今のコメントの中で映画『スティング』の名が出てきた。ポール・ニューマンとロバード・レッドフォードという二大スターによる信用詐欺を描いた作品で1970年代の大ヒットした映画だ。

 『コンフィデンスマンJP』の第1話は、冒頭に賭博場が出てきて、『スティング』へのオマージュを感じさせる。しかし、なぜ、『スティング』のように見ていてハラハラドキドキしないのか。

 「『スティング』は、まず賭博場のセットを作るのに、主人公たちが不動産の下見をしたり、リフォーム業者と交渉したりします。詐欺を手伝わせるキャストを面接するシーンもあります。そういう過程を見せるから、視聴者は企てに感情移入して、先を見たくなるんです」(先出・編集者)

 一方、『コンフィデンスマンJP』は最初から賭博場のセットが出来ていて、長澤まさみが肌を見せ、刀を振り回すと作戦は成功してしまう。

 「せっかくの賭博場のシーンなのに、どうして、賭け事のディテールを描かないのか首をかしげますね。『スティング』の見せ場はポール・ニューマンと敵のポーカーシーンでしょう。敵がいかさまを仕掛けてくる様子を描いて、“うわ、負けちゃう!”と見る側がハラハラしていると、ポール・ニューマンが倍返しのいかさまで勝つんです。気持ちがいいですよね」(先出・編集者)

 『スティング』ではロバートレッドフォードは常に殺し屋や敵に命を狙われ、見る側もヒヤヒヤするが、『コンフィデンスマンJP』では登場人物たちは切羽詰まった危機にも襲われず、敵は簡単に騙されてしまう。都合が良すぎて、見応えがないのかもしれない。 ・・・ログインして読む
(残り:約973文字/本文:約2536文字)

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。
Journalismの記事も読めるのは全ジャンルパックだけ!


筆者

杉浦由美子

杉浦由美子(すぎうら・ゆみこ) ノンフィクションライター

1970年生まれ。日本大学農獣医学部(現・生物資源科学部)卒業後、会社員や派遣社員などを経て、メタローグ社主催の「書評道場」に投稿していた文章が編集者の目にとまり、2005年から執筆活動を開始。『AERA』『婦人公論』『VOICE』『文藝春秋』などの総合誌でルポルタージュ記事を書き、『腐女子化する世界』『女子校力』『ママの世界はいつも戦争』など単著は現在12冊。

杉浦由美子の新着記事

もっと見る