大久保真紀(おおくぼ・まき) 朝日新聞編集委員(社会担当)
1963年生まれ。盛岡、静岡支局、東京本社社会部などを経て現職。著書に『買われる子どもたち』、『こどもの権利を買わないで――プンとミーチャのものがたり』、『明日がある――虐待を受けた子どもたち』、『ああ わが祖国よ――国を訴えた中国残留日本人孤児たち』、『中国残留日本人』など。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
女性同士の入店を拒否した老舗の店
「女人禁制」ならぬ、「女人だけは禁制」という経験をしたことがあります。
かつて東京・銀座に昭和のはじめから開いているバーがありました。木造2階建ての店は重厚な木の扉を開くと、落ち着いた「昭和」の世界が広がっていました。私はずいぶん前に、先輩の男性記者に連れられて足を踏み入れました。
「あの席は、山本五十六が好んで座っていた」と教えられ、空いているときにそっとその席に座ることもありました。レトロな雰囲気が気に入り、その後は、取材先や後輩記者、友人を連れては、銀座に行くときは結構足を運びました。
あるとき、女性記者3人で食事をした後、もう一杯やっていこうかということになり、私はこのバーに仲間を案内しました。重い扉を開け、中に入りました。そんなに混んでいません。いつものように階段で2階に上がろうとしたところ、声をかけられました。
「女性の方の入店はお断りしています」
「えっ?」
私は耳を疑いました。
これまで何十回も来て、お酒をいただいてきました。「何回も来ていますが……」と言いましたが、昔の女給さん風のウェイトレス姿をした、年齢が高めの女性が「女性の方の入店はお断りしています」と繰り返しました。私は意味がわからず、混乱しました。
よく耳を澄ますと、