「負けて本当に清々しい」 東京五輪へ楽しみな共闘時代の幕開け
2018年05月11日
昨年のモントリオールで行われた世界選手権跳馬の着地で足首を痛め、復帰にかける内村航平(29=リンガーハット)と、世界選手権で内村の棄権後大躍進を見せた白井健三(日体大)の2人がどんな演技で競い合うか、26日の公式練習から、メディアもファンも一騎打ちを盛り上げた。予想通り、予選トップは白井で、さらに内村はあん馬の落下が響いて5位に。
誰もが白井が内村の全日本11連覇を阻止し、歴史を塗り替えると決めつけていた決勝、堂々の演技で優勝を果たしたのは順大の谷川翔だった。しかも内村の11連覇阻止と同時に、全日本史上最年少となる19歳2カ月での優勝と、2つの歴史を鮮やかに塗り替えて見せた。
2017年、わずかな差で白井を退け10連覇の偉業を果たした際、内村は「勝って地獄」と、その優勝を表現している。
「もう地獄ですよね。負けたほうがどんなに楽だったか」
笑いながら選んだ「地獄」という言葉には、どこか凄みさえ漂い印象に残っていた。言葉の背景には、連勝を続ける難しさなどよりも、ライバルではなく、自分と戦い続けなくてはならない10年間の苦闘が滲んでいたのだろうか。そして今年、谷川、白井と大学生2人に敗れて3位だった内村に「地獄は終わったか」と聞くと、満面の笑みを浮かべて言った。
「本当に清々しいですね。10年間、自分を超えるっていうのが一番難しい戦いだと思っていたんで。若手がきっちり勝ってくれて、これで本当に肩の荷が下りた」
彼ほどのレベルのトップ選手になれば勝ち方の美学は当然持っている。一方で時代を築きながら突然訪れる敗戦に見せた姿と言葉にも、徹底した美学があったように見えた。
有料会員の方はログインページに進み、デジタル版のIDとパスワードでログインしてください
一部の記事は有料会員以外の方もログインせずに全文を閲覧できます。
ご利用方法はアーカイブトップでご確認ください
朝日新聞社の言論サイトRe:Ron(リロン)もご覧ください