杉浦由美子(すぎうら・ゆみこ) ノンフィクションライター
1970年生まれ。日本大学農獣医学部(現・生物資源科学部)卒業後、会社員や派遣社員などを経て、メタローグ社主催の「書評道場」に投稿していた文章が編集者の目にとまり、2005年から執筆活動を開始。『AERA』『婦人公論』『VOICE』『文藝春秋』などの総合誌でルポルタージュ記事を書き、『腐女子化する世界』『女子校力』『ママの世界はいつも戦争』など単著は現在12冊。
石坂浩二、織田裕二……ダメな男を演じることは俳優がスターになる登竜門である
俳優がスターになっていく登竜門として、ダメな男を演じて、好評を得るというのがある。昭和時代、石坂浩二は女に依存する弱い男を演じ、二枚目としての地位を確立した。織田裕二も1991年に『東京ラブストーリー』(フジテレビ系)で、ヒロインに振り回される優柔不断なダメな男を演じ、一躍スターになった。藤原竜也は『デスノート』(ワーナー・ブラザース)や『カイジ 人生逆転ゲーム』(東宝)で反社会的なダメな男を演じ、アイドル俳優から大人の俳優へ成長した。その時代にあったダメな男を演じることは、息の長いスターになるきっかけになっていく。
そして、今、この「ダメな男を演じて注目される」というポジションにいるのが田中圭だ。現在、『おっさんずラブ』(テレビ朝日系)で、男性上司から愛の告白をされ、右往左往するダメなサラリーマン春田を演じている。
非常に練られた脚本と演出のドラマで好評だ。雑誌『コンフィデンス』(オリコン)のドラマ満足度調査で深夜ドラマながら1位を獲得した。また、部長が春田を隠し撮りしたという設定のインスタグラムは約40万フォロワーを獲得し、今クールのドラマの公式アカウントでトップを誇る。
ラブコメディであるが、緻密な脚本や演出で、ホラーテイストに仕上がっていて、女性だけではなく、男性視聴者の心もつかんでいる。私も実はヒッチコックマニアの男性からこのドラマを勧められて見だしたが、講談社のウェブマガジン『現代ビジネス』(5月9日付)で、コラムニストの堀井憲一郎も今クールのドラマでイチ押しとして『おっさんずラブ』を挙げている。
今回は話題のドラマ『おっさんずラブ』で主演をつとめる田中圭がどうブレイクしていくのかを見てみたい。
論座ではこんな記事も人気です。もう読みましたか?