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知的障碍者の強制不妊手術の深層(上)

精神科医として80年代に見聞きした人権蹂躙と患者へのひどい待遇

和田秀樹 精神科医

旧優生保護法による強制不妊手術被害の提訴後、記者会見する原告団の弁護士と原告男性(右手前)=2018年5月17日、東京・霞が関拡大旧優生保護法による強制不妊手術被害の提訴後、記者会見する原告団の弁護士と原告男性(右手前)=2018年5月17日、東京・霞が関
 旧優生保護法に基づき、知的障碍者らが不妊手術を強制された問題で、北海道、宮城県、東京都在住の70歳代の男女計3人が5月17日に、人権を侵害されたなどとして、国に賠償を求める訴訟を札幌、仙台、東京の各地裁に一斉に起こしたとのことだ。

 この3人の強制不妊手術は1950年代から60年代に行われたものだという。

 おそらく当時の知的障碍者や精神障碍者には、およそ人権というものがなかったようだ。

精神医療の告発は1970年代から

 70年に朝日新聞の大熊一夫記者が精神科病院に潜入取材をすることで「ルポ精神病棟」という記事を書いたころから、精神医療の患者の人権無視というか、人権破壊の現状がボチボチ告発され始めた。

 私が精神科医になる2年前の83年に患者2人が看護職員の暴行によって死亡した宇都宮病院事件というのが翌年に発覚した。院長が気に入らない患者をゴルフクラブで殴っていたことなどが明らかにされ、若い患者が多いのに、直近の4年間で222人もの患者さんが院内死していることも明らかにされた。

 私も告発集会に参加し、患者さんの証言を聞いたが、昼食というと一列に並んでパンを立って食べさせる。精神科の薬が強いため、それで喉をつまらせる患者さんもいるのだが、院長が消毒していないハサミで喉を切って窒息から救うみたいなことをしていたという。

 私が医者になって最初に外勤に出た精神科病院は開放的な病院として知られていたが、そこに入院する兄が副院長に頼んで、大分県の悪徳精神科病院から転院させてもらったその弟が私の最初の患者さんだった。

 16歳で万引きをして、発言が妄想的だったということで強制入院させられたその患者さんは、それから20年間、病院どころか、閉鎖の男子病棟から一歩も出たことがなかったという。屈強な男子の看護職員しかいないため、20年間女性を見たことがないのだ。 ・・・ログインして読む
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筆者

和田秀樹

和田秀樹(わだ・ひでき) 精神科医

1960年、大阪市生まれ。東大医学部卒。現在、国際医療福祉大教授、和田秀樹こころと体のクリニック院長、川崎幸病院精神科顧問、緑鐵受験指導ゼミナール監修。専攻分野の老年精神医学、精神分析学のほか、大学受験を中心とした教育制度・政策、自ら監督をつとめたことがある映画についての発言も多い。著書に『感情的にならない本』『心と向き合う臨床心理学』など。

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