大会4日前のジンバブエ戦のあと激論で腹をくくったサッカー日本代表
2018年06月11日
数え切れないほど日本代表戦を取材してきたが、「ドーハの悲劇」、「ジョホールバルの歓喜」など歴史や、感動的勝利とは全く無縁なのに今でも忘れられない試合がある。
成績不振で契約解除となったハリルホジッチ監督(65)指揮下で、昨年10月にニュージーランドと行った親善試合以来、これで8カ月間、7戦勝ちなし。危機的状況ではなく、危機と表現するべき事態だからこそ、あの「忘れられない試合」の取材を思う。
2大会前の2010年W杯南ア大会前も、日本代表は攻守ともに混乱し、上昇の兆しすら掴めずにいた。岡田武史監督(60)のもと、国内で行われた親善試合(4月)、セルビア戦は屈辱の0-3で完敗。壮行試合となったW杯出発直前の日韓戦(5月24日)も約6万人のファンの前で、0-2の完封負けをし、埼玉スタジアムは拍手ではなく、約6万人のファンからの激しいブーイングに包まれた。
再起をかけて臨んだ欧州合宿で状況はさらに悪化する。
今回のスイス戦同様、国際ランキング一桁の「ランカー」イングランドと親善試合(オーストリア・グラーツ)を行うが実力の差は歴然としており、DF田中マルクス闘莉王の1点で完封負けは逃れたが1-2で敗れ、セルビア戦から3連敗目。最後のテストマッチとして行われたコートジボワール戦(スイス・シオン)も再び0-2で、10日後のW杯にはもう誰も期待をしなくなった。何よりも深刻だったのは、攻守で完全に自信を失ってしまった選手たちの心理状況である。
南アの高級リゾート地ジョージを本番のベースキャンプとした当時の代表は、コートジボワール戦後、初戦のカメルーンを想定して最後の調整に臨むため、世界ランキングで180位ほどだったアフリカのジンバブエと30分3本の練習試合を組んだ。国際Aマッチではなかったが、日本代表の試合として忘れられないのは、成果はゼロに見えた最悪の内容と共に、周囲が「最弱」「W杯は終わった」とさえ見放したこの試合が、実はW杯決勝トーナメントの起爆剤になっていたと、後に分かったからである。
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