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連敗でどん底だった2010年W杯前に見えた光明

大会4日前のジンバブエ戦のあと激論で腹をくくったサッカー日本代表

増島みどり スポーツライター

 数え切れないほど日本代表戦を取材してきたが、「ドーハの悲劇」、「ジョホールバルの歓喜」など歴史や、感動的勝利とは全く無縁なのに今でも忘れられない試合がある。

スイス戦前半、相手選手と競り合う日本代表の大迫=2018年6月8日、スイス・ルガノ拡大スイス戦前半、相手選手と競り合う日本代表の大迫=2018年6月8日、スイス・ルガノ
 W杯ロシア大会直前に監督が交代し、メンバー選考も混沌とし、5月30日、西野朗新監督(63)のもと心機一転スタートを切る壮行試合のはずがW杯には出場しないガーナに0-2で敗戦。代表23人が決定して始まったオーストリア合宿で連携も若干進んだかと期待されたスイス(世界ランキング6位)との親善試合(9日、スイス・ルガノ)戦も0-2と、2戦連続で完封負けを喫してしまった。

 成績不振で契約解除となったハリルホジッチ監督(65)指揮下で、昨年10月にニュージーランドと行った親善試合以来、これで8カ月間、7戦勝ちなし。危機的状況ではなく、危機と表現するべき事態だからこそ、あの「忘れられない試合」の取材を思う。

 2大会前の2010年W杯南ア大会前も、日本代表は攻守ともに混乱し、上昇の兆しすら掴めずにいた。岡田武史監督(60)のもと、国内で行われた親善試合(4月)、セルビア戦は屈辱の0-3で完敗。壮行試合となったW杯出発直前の日韓戦(5月24日)も約6万人のファンの前で、0-2の完封負けをし、埼玉スタジアムは拍手ではなく、約6万人のファンからの激しいブーイングに包まれた。

 再起をかけて臨んだ欧州合宿で状況はさらに悪化する。

 今回のスイス戦同様、国際ランキング一桁の「ランカー」イングランドと親善試合(オーストリア・グラーツ)を行うが実力の差は歴然としており、DF田中マルクス闘莉王の1点で完封負けは逃れたが1-2で敗れ、セルビア戦から3連敗目。最後のテストマッチとして行われたコートジボワール戦(スイス・シオン)も再び0-2で、10日後のW杯にはもう誰も期待をしなくなった。何よりも深刻だったのは、攻守で完全に自信を失ってしまった選手たちの心理状況である。

 南アの高級リゾート地ジョージを本番のベースキャンプとした当時の代表は、コートジボワール戦後、初戦のカメルーンを想定して最後の調整に臨むため、世界ランキングで180位ほどだったアフリカのジンバブエと30分3本の練習試合を組んだ。国際Aマッチではなかったが、日本代表の試合として忘れられないのは、成果はゼロに見えた最悪の内容と共に、周囲が「最弱」「W杯は終わった」とさえ見放したこの試合が、実はW杯決勝トーナメントの起爆剤になっていたと、後に分かったからである。 ・・・ログインして読む
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筆者

増島みどり

増島みどり(ますじま・みどり) スポーツライター

1961年生まれ。学習院大卒。84年、日刊スポーツ新聞に入社、アマチュアスポーツ、プロ野球・巨人、サッカーなどを担当し、97年からフリー。88年のソウルを皮切りに夏季、冬季の五輪やサッカーW杯、各競技の世界選手権を現地で取材。98年W杯フランス大会に出場した代表選手のインタビューをまとめた『6月の軌跡』(ミズノスポーツライター賞)、中田英寿のドキュメント『In his Times』、近著の『ゆだねて束ねる――ザッケローニの仕事』など著書多数。

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