杉浦由美子(すぎうら・ゆみこ) ノンフィクションライター
1970年生まれ。日本大学農獣医学部(現・生物資源科学部)卒業後、会社員や派遣社員などを経て、メタローグ社主催の「書評道場」に投稿していた文章が編集者の目にとまり、2005年から執筆活動を開始。『AERA』『婦人公論』『VOICE』『文藝春秋』などの総合誌でルポルタージュ記事を書き、『腐女子化する世界』『女子校力』『ママの世界はいつも戦争』など単著は現在12冊。
プライベートよりも仕事を優先する女優たちは仕事でメリットのある男性しか選ばない
前回は映画ビジネスの現状について書いた。
ビジネスは元手がないと始まらない。映画や舞台もそうだし、テレビ番組もスポンサーがつくから成り立つ。そのため、女優や俳優は投資家との付き合いが必須となる。
前の記事でも書いたが、私は”売れる前に女優を辞めた人”たちに何度かあった。彼女たちが挫折した理由をこう話す。「役者としてどこまで伸びるかは自分では判断できないのだけど、ただ、女優を続けるにはスポンサー(タニマチやパトロン)に取り入ることが必須で、それが自分には無理だと思った」
連続ドラマ出演経験がある女性は「女優もホステスもハードワークなのに、両方をちゃんとやれというのはハードルが高すぎる。売れている女優さんたちは両方をちゃんとこなすのだから超人です」とも語っていた。
男女問わず、映画で主演級の役者たちはみな超人なのである。そのような超人たち、その中でも女優というのは、非常に特殊な仕事人間だ。普通、女性は顔を晒すということを避けたがる。テレビ番組のディレクターから「こういうテーマで取材をしている。顔出しの取材に応じてくれる一般の女性を紹介してくれ」と頼まれることが多々あり、協力するのだが、なかなか見つからないのだ。ディレクターたちも「男性の場合は割と気軽に顔出しで出てくれるけれど、女性の場合は難しい」と嘆く。
また、組織の公式サイトを見ていて、スタッフ紹介のページにアクセスすると、男性はみな顔写真を載せているが、女性たちは写真がなかったり、後ろから撮影し顔がよく見えない写真を載せたりしていることも多い。インスタグラムやフェイスブックでも女性は顔が出ている写真を全体公開していることは少ない。
不特定多数の相手に顔を見られたくない。平均的な日本人女性はそう考える。目立つこともなく、平穏な日々を過ごし、家族や友人と心地よく暮らす。それが一般的な日本人女性の望みだ。
その一般的な望みを端から捨てているのが女優たちである。プライベートでの幸せよりも、仕事を選んだ人たちだ。そのため、自分の仕事でメリットがある相手と交際したり、結婚をしたりするのが当たり前だ。
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