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女性間のマタハラはなぜ深刻化していくのか(上)

「資生堂ショック」から4年経つが、子どもがいない女性といる女性の対立は消滅しない

杉浦由美子 ノンフィクションライター

 マタハラ(マタニティハラスメント)という言葉が普及して久しい。妊娠、出産、子育てなどを理由とした嫌がらせや不利益な扱いを受けることをさす。このマタハラも時代と共に変化している。今回は女性の間の対立から生じるマタハラについて言及したい。女性が多い職場は人間関係が複雑になるが、それと同時に女性が主体となって働ける。そこでどういう問題が起きているのか。

「お前の腹が膨らんで俺らは迷惑だ」

 2000年代半ばまでのマタハラは、男性側の理解が足りないために起きるものだった。

 たとえば、2000年代前半に、専門職のある女性が妊娠をすると、男性の上司から「お前の腹が膨らんだせいで俺らは迷惑をしている」と面と向かって言われたという。「就職したら定年まで絶え間なく働くことが前提」と思い込んでいるから、それとは違うスタンスで働こうとする部下を理解出来なかったのだ。

産んだ女性とそうでない女性の対立

 しかし、女性が出産後も働き続けるのが当たり前になってくると、女性間の対立が表面化してくる。2015年に「資生堂ショック」という報道がNHKでされ、大いに話題になった。

資生堂には十数年前から事業所保育所がある=2015年12月、東京都港区拡大資生堂には十数年前から事業所保育所がある=2015年12月、東京都港区
 資生堂の販売員をビューティーコンサルタント(以下、BC)という。BCたちは出産すると、通算5年の育休や時短勤務を認められてきた。しかし、資生堂は2014年、育児中の時短社員に、遅番や土日のシフトに積極的に入るように制度を変えた。資生堂は女性が働きやすい企業としてプロモーションしてきたはずだ。その資生堂が子どものいる女性に優しくないよう制度を変えた――これを「資生堂ショック」と呼んだのだ。メディアやSNS上でも大いに話題になった出来事だった。

 さて、なぜ、このような変更がされたのか。子どもがいないBCたちが「育児中の時短社員だけがシフトの選択で優遇されるのは不公平だ」と訴えたからだ。子どもがいない女性も、夜や週末は自由に過ごしたいだろう。未婚者なら合コンや女子会に行きたいし、既婚者なら夫と過ごしたいという希望もあろう。夫と一緒にいる時間がなければ子どもは作れない。

 そして、子どものいないBCたちの意見が通ったことは、すなわち資生堂の女性たちが発言権を持っていることを示す。

反発が水面下に潜るとマタハラが発生する

 春の連続ドラマ『Missデビル 人事の悪魔・椿眞子』(日本テレビ系)でもマタハラをテーマとする回があった。男性上司が ・・・続きを読む
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筆者

杉浦由美子

杉浦由美子(すぎうら・ゆみこ) ノンフィクションライター

1970年生まれ。日本大学農獣医学部(現・生物資源科学部)卒業後、会社員や派遣社員などを経て、メタローグ社主催の「書評道場」に投稿していた文章が編集者の目にとまり、2005年から執筆活動を開始。『AERA』『婦人公論』『VOICE』『文藝春秋』などの総合誌でルポルタージュ記事を書き、『腐女子化する世界』『女子校力』『ママの世界はいつも戦争』など単著は現在12冊。

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